紗季に言われた通り、私は紗季の目の前に座った。

そして気がついた。
『紗季の手が震えている』ことに・・・・。

こんな紗季、初めて見るかもしれない。
どんな場面でも強気の紗季なのに。

いつも私を励ましてくれる優しい味方なのに。

・・・・・・・。

あぁでも、今は『敵』なのかもしれないね。

そう思ったら、紗季が動揺する理由が何となく分かる気がする。

・・・・・。

そして紗季は始める・・・・。

「大体の事はこっちゃんから聞いたから。あの子凄いでしょ?変な所まで気がついて。『監視カメラ』なんて、普通は気付かないよ」

少し怯えたような紗季の声に、私は少し間を置いてから答える。

「確かにそうかも。最初は小緑が何を見ているのか分からなかったし」

「その小緑の行動で、姉の私はドン底に叩き落とされたんだけどね」

聞きたくない紗季の言葉に、私は無意識に紗季から視線を逸らした。
そして『それ以上は聞きたくない』と自分に言い聞かせる。

私は言葉が出てこなかった。
落ち込む紗季の表情を見て必死にフォローをしたかったけど、私の脳裏に浮かぶ言葉はすべて今の紗季を苦しめるだけの言葉。

『やっぱり紗季が犯人なの?』とか。
『どうして紗季はあの場所にいたの?』とか。

出てくる言葉は今の紗季を精神的に追い詰める言葉だけ。
それでも紗季は自ら七年前の出来事を私に告白した・・・・。

「知っての通り七年前のあの日、私はウサギ小屋に行っていた。それだけじゃなくてウサギに餌を与えていた。何を食べさせていいのか分からなかったから、道端の草を食べさせた。だからウサギを殺したのは犯人は、山村紗季。・・・・・私、なんだ。茜ちゃんのトラウマをネジませた犯人は、実は私なんだ。ずっと黙っていて、本当にごめん」

紗季は私の顔色を伺うと共に辛そうな表情を見せていた。
その仕表情を見ると、どれだけ紗季が苦しんできたのかよく分かる気がした。

紗季の気持ちが痛いほど理解出来る。

けど・・・・・。

私はそんな紗季の言葉、納得したくない。

「まだ『紗季が犯人』って決まったわけじゃない。何か別の要因があったかもしれないし」

紗季が犯人だと言う証拠がない。
証拠がないないのに、紗季の言葉を鵜呑みにする方がやっぱりどうかしている。

紗季が親友なら、私は助けたい。

「茜ちゃんは本当に優しいんだね。もっと怒ってもいいんだよ」

一方で、そう言う紗季はこんな状況でも笑っていた。
きっと不安になっている私を励ましてくれているのだろう。

励まさないといけないのは私の方なのに・・・・。

私は紗季の言葉を否定する。

「出来ないよそんなこと。だって紗季だし。ずっと信頼してきた大好きな親友だし」

何か紗季には理由があるはず。
『紗季があの場に居た理由』があるはず。

そう思いながら私は続けた。

「それに、城崎さんや樹々に言われたんだ。『もっと前向きに考えよう』って。『本当に紗季が犯人だったとしたら、みんなで紗季を助けよう』って。それに愛藍が花について調べてくれているんだ。映像の画質が最悪だから、特定するのは難しい。それに時間はかかるけど、絶対になんとなるって!というか、そもそも紗季が犯人なわけないじゃん!だからもう少し私と一緒に頑張ろうよ。その・・・・また私を助けてよ!」

私は慌てて言葉を組み立てた。
そして紗季を励ました。

『今の紗季には何が一番有効かな?』って考えたけど・・・・・。

「ごめん、それは無理かも」

どうやら紗季の心には私の言葉は届いていないみたいだ・・・・。

「なんでさ! 」

紗季は小さな声で答える・・・・。