確かあれは、父が我が家に帰ってきた時の晩御飯。
『海外でピアノを弾いてみないか?』ってどう言う意味なんだろうか。

どれだけ考えても、その言葉の本質が分からない。
そもそも私、パスポートを発行したことないし。

この国から出たことがないのに。

本当に謎過ぎる。
それとも『茜は社会で働くことが出来ないから、もう俺達で茜を養っていこう』なんて会話を裏でしているのだろうか?

だとしたら私、絶対に嫌なんだけど。
家族だからって、これ以上兄や父に迷惑かけたくないんだけど・・・・。

だとしたら、嫌でも大学に通うべきなのかな。
少しでも将来の道を増やして、頑張るべきなんだろうか。

そして『高校三年生って難しい年頃だ』って、十一月の終わりに気がついた私。
本当に人生を舐めている気がする・・・・。

ちなみに紗季は保育の専門学校。
橙磨さんは住み込みでアルバイトしている焼鳥屋さんでこれからも働くみたいだ。

『こう見えて逮捕歴もあるから、就職も上手く行かないだろうね』って、橙磨さん樹々同様に笑って誤魔化していた。
妹も未だにだ眠り続けているのに、本当に橙磨さんも強い人だ。

それと愛藍は来年からドイツにピアノ留学をするらしい。
有名なピアニストであり、愛藍の母親の柴田藤子(シバタ フジコ)さんの提案らしい。

本人はあまり乗り気じゃないみたいだけど、『俺にはピアノしかない』って強い瞳で私に言っていた。
無理していないといいけど・・・・。

樹々は再び就職先を探すらしい。
今朝から携帯電話で『新卒の求人サイト』をずっと見ているし。

進路指導室に来たのも、樹々が『求人を見たいから』と言う理由でここに来たわけだし。

ちなみに私はここに来る予定なんてなかった。
来たくなかったのが本音だ。

『ここにはもう絶対に来ない』って夏休みに心に誓ったのに・・・・・。

・・・・・・。

もうニートでいっか。