「お子ちゃまの茜ちゃんにはまだ早かったか?」

兄の言葉に『うるさい』と反論したかったけど、私の箸は止まらなかった。
無意識に、まるで中毒のように再びたこわさびを突っつく。

キツいけど、また食べたい。

「美味しい」

そしていつの間にか私はそんなことを呟いていた。
一口も飲んでいなかったジンジャーエールのジョッキも、いつの間にか無くなっていた。

とにかく凄く美味しかった。

一方でその私の姿を見た兄と樹々は、少し引いたような目で私を見ていた。

でも最後は何故だか笑っていた。
人を嘲笑うように、二人は大きな声で笑っていた。

意味が分からない・・・・。

「あはは。コイツ絶対に将来酒飲みになるぞ絶対に。平気な顔して、一升瓶を一人で空けそう」

「朱羽さんの例え、すぐに想像出来ました。恐ろしいですね、茜って」

って言うけど、そもそも私ってお酒は多分飲めないだろうし。
お酒の香りって、あんまり好きじゃないし・・・・。

ってか勝手に変な私を思い浮かぶな!

「もう!勝手に変な私の未来を想像しないで!」

「いいじゃなねぇの?本当は俺、茜とお酒を飲める日を凄く楽しみにしているんだからな」

そういえばその兄の言葉、前に城崎さんにも同じことを言われた記憶がある。
『早く茜ちゃんと一緒にお酒を飲みたいな』って、毎日話す電話で話していたことがあったっけ。

・・・・・。

だったら、私も早くお兄ちゃんや城崎さんと一緒にお酒を飲んで話したい。
大人じゃないと分からない愚痴を語り合いたい。

そして『あと三回、早く誕生日が来ないかな』って思う自分がここにいる。

同時に『早く大人になりたいな』って思う自分がここにいる。
自分の未来が楽しみな私がいる。

って、さっきまで未来を絶とうとしていた人が何考えているんだろうね。
さっきの自分がバカみたい。

本当に、死にたいと思った自分が馬鹿みたい・・・・・・。

・・・・・・。

ホント、馬鹿みたい・・・・・・。

いや、本当に馬鹿だよ私は・・・・。

みんな私の味方なのに、どうして気づかなかったんだろう・・・。