「いった!」

乾いた音と、私の叫ぶ声が店内に響く。
また心配そうな目で店員に見られているのだと思ったら、少し恥ずかしいと思う自分がいる。

樹々は私を睨みつける・・・・。

「茜、どうしてあたしがこんなに怒っているか、知っている?」

樹々の言葉に、私は首を横に振った。
考えようと思ったけど、頬が痛くてそれどころじゃない・・・・。

ってか、マジで痛いよ樹々・・・・。
お兄ちゃんにもお父さんにも殴られたことがないのに・・・・・。

そんな私を無視して、樹々は続ける。

「アンタが死のうとしたから。あたしに感謝の気持ちを伝えないまま自殺しようとしたから。死んだらもう二度とここには帰ってこれないんだよ。本当に意味わかっているの?」

樹々に出会って初めて怒られて、私は樹々から目を逸らした。
『都合が悪くなると、目を逸らす癖』も、相変わらず直っていない。

今日の樹々はよく怒っている。
見たことない樹々の表情に私は戸惑いを隠せないけど、樹々は全て、『私のためだけ』に怒ってくれるのだ。

自分は関係ない。
本当に私のためだけに行動してくれる変な親友だ。

樹々が言った『好き』と言う気持ちの力は、そこまで人に力を与えてくれるのだろうか。

「次にまた『死にたい』と思う時あるなら、頼れる親友全員に許可を貰ってから死になさい。あたしに紗季、小緑、橙磨さんとあの色黒のでっかい茜の親友も。あと江島葵だったっけ?その全員から許可を貰わないと、自殺なんてバカな真似は許さないからね。それで相談してくれたら、『茜が死なないように済む方法』を考えてあげるから。わかった?それが『仲間』ってもんでしょ?」

力強い樹々の言葉に、私は今度は頷いた。
同時に不思議と元気が出てくる言葉だと思った。

仲間か・・・・。
最近、その言葉ばっか聞いていたな。

結局その言葉の意味を私は出来なかったけど・・・・・。

でも分かったことが一つ。
私が本気になれば、仲間も本気で私に答えてくれるってことに気がついた。

私が自殺をしようとしたから、私の仲間は全力で私を救ってくれた。
本気で私の力になってくれた。

今日の樹々がいい例えだ。
私が『本気で過去と向き合う』って昨日誓ったから、樹々も本気で私を守ろうとしてれくれる。

今まで見せたことのない表情だって、樹々は見せてくれる。
全力で私を応援してくれる。

・・・・・・。

これが仲間の力なんだろうか?

だとしたら、そんな樹々や仲間に、いつか『ありがとう』って言いたい・・・。