「そう考えたら、自分がどうして頑張っているのか分からなくなる時があるよ。『なんで自分はこれだけ頑張っているのに認めてもらえないんだ』って。死にたくなる時もあるよ」

兄のその言葉は私への説教に感じた。
私は逃げようと席を立とうとしたけど、すぐに兄に腕を捕まれる。

兄はまだまだ言葉を続ける。
まるで、逃げるのは早いと言うように・・・・・。

「なのに、茜ちゃんはまだ社会に足を踏み入れていないのに、自殺しようとした。本当にそれ、辛かったのか?」

本当に兄はいつもズルい人だと思う。
いつも私の行動や思考を先読みして、私の逃げ場を大きな岩で塞き止める。

「えっと、朱羽さん・・・・・茜は」

「知っている。茜は小学生の時の親友に、コテンパンにいじめられたから。だったら辛かったはずじゃないのか?苦しかったはずじゃないのか?苦しいなら、なんで俺と父さんに言ってくれなかったんだよ。なんで俺が気付くまで黙っていた?『頼り方知りませんでした』じゃ言い訳にならないぞ」

私のいじめが収まったのは、兄が私の受けているいじめに気付いてくれたから。
すぐに家族会議が開かれて、父が学校に相談してくれたから。

そして私の学校生活は保健室登校に変わり、中学も葵と愛藍を避けて違う中学校に入学した。
だから、兄はその事に怒っているのだろう。
同時に心の底から心配してくれていた。

真剣な眼差しで、私の表情をうかがっている。

一方の私は、兄の言葉に答えたくなかった。
また無視しようかと思った。

だって、私の言う事なんて誰も信じてくれないし・・・・。

でも、今はそうは思わなかった。
さっきからそうだけど、今の私は気がどうかしている。

まるで喧嘩のように感じた兄の言葉に、私は無意識に返していた。

「私が葵にあんなことを言ってしまったから。だから、『いじめは私への罪滅ぼし』って言うか・・・・。お兄ちゃんに言う必要なんてなかった。『いじめられて当たり前』だと思った」

私が葵を貶めようとしてしまった。
更にやウザキという『一つ命』が亡くなっているんだ。

私がいい加減な事を言ってしまったから、こんなことになってしまった。
経緯を見れば、どう見ても私は悪者だから、正義の二人にやられたから、悪の私は罪を償うのは当たり前・・・・・。

それが七年間の私の答え。
一度もその答えを変えたことはない。

二人は何も悪くない。
悪いのは私一人だけ・・・・・。

一方の兄は納得しない。
大きなため息を一つ吐くと、頭を抱えるような仕草を見せた。

そして私の答えを踏みにじる・・・・。