目を覚ますと、そこはリビングにあるソファーの上だった。
眩しく感じる部屋の明かりと共に、騒がしい兄と父の声が聞こえる。

・・・・・・・。

本当に騒がしい。
それはまるで雑音のように聞こえる。

何でもない会話なのに、聞いていると頭が痛くなる・・・・。

「おいクソジジイ!そりゃいくらなんでも」

「だがこうなってしまったのも、父親である俺のせいだ。今からアイツと話をつけてく
る」

「ちょ、だからさ。もうちょっと待ってみよって」

「朱羽の気持ちはわかる。そして理解したから言っているんだ。茜と一緒で現実から逃げるのもやめよう。俺もお前も、もちろんアイツもな」

どうして父の声が怒ったような声で兄と話しているのか、私には全く理解できない。
同時にどうして私の名前が出てくるのか分からない。

と言うか私、何をしたんだったっけ?

頭が痛くて、何にも思い出せない・・・・。

「茜を頼むぞ。あの子も一緒に連れて、茜の愚痴でも聞きながら飯でも喰ってこい」

そう言った父はリビングから出ていったみたい。
玄関の扉が閉まる音が聞こえたから、きっとどこかに行ったのだろう。

その『どこか』とは、一体どこなんだろうか?
いつもの私ならそう思うはず。

だけど、今はとにかく頭が痛くて他の事は考えられなかった。
意識を維持するだけで、かなりエネルギーを消耗する。

頭と同時に身体全身が痛い。
何でだろうと考えてみるも、やっぱり何も思い出せない。

それと何で首元も痛むんだろう。
まるで、さっきまで誰かに首を締め付けられていたかのように。

・・・・・・。

あぁそっか。
私の首を締めたの私だ。

私、自殺しようと父のベルトを使って死のうとしていたんだ。

だから身体が痺れるように痛むし、頭も割れるように痛いんだ。
首を吊っている時に必死に暴れてしまったんだろう。

首吊り自殺するときは、『意識がなくても生きようとする潜在能力で暴れてしまう』って自殺サイトにも書かれてあったし。

・・・・・・。

ってことは私・・・・・生きているんだ。

痛みがあるってことは、生きている証拠なんだ。

『自殺』じゃなくて、『自殺未遂』になっちゃったんだ・・・・・。

みんなのために死のうとしたのに、情けないね。

・・・・・・。