星空か輝く夜空の下を、俺は痛めている膝を庇いながらひたすら走り続ける。

向かったのは茜の家だ。
時間も夜の八時だし、こんな時間に外出してどこかに行っているとは考えにくい。

茜の家に昔はよく遊びに行っていた。
覚えている事と言えば、茜のお兄さんがお菓子やジュースを用意してくれた事。

お兄さんはいつも優しくて、茜とは対照的でとても明るい人だ。
でもたまに帰ってくると言う茜の父親とよく喧嘩をしているから、本当は滅茶苦茶怖い人なんだと思うけど・・・・。

そういえば『兄妹はよく似る』って聞くけど、本当は茜も明るい性格なんだろうか。
それによく怒るのだろうか。

ずっと一緒にいた俺と茜なのに、俺はそんなことも知らないんだって思ったら、凄く悲しい気持ちになった。

『それで親友かよ』って思ったら、苦しくなった・・・・。

家を飛び出して十分が経過した。
痛む膝を庇いながら、俺は夜の街を駆け抜ける。

確か茜の家はこの角を曲がった先だと、うろ覚えの記憶を思い出しながら俺は走り続ける。

そんな中、前から長い茶髪の女の子が向こうから走ってくる。
こんな時間にどうして制服で走っているんだろう?

それに今日は日曜日なのに、なんで制服?
何かの罰ゲームだろうか?

俺は理解に苦しむ。

やがてその少女は俺とすれ違う。
そういえばその制服、茜が通う制服と同じだ。

あとこの子、どこかで見たことあるような・・・。
確かカフェ会で茜と一緒にいた女の子によく似ているけど、同じ人物なんだろうか?

でも俺は『まあいっか』と気持ちを切り替える。
今は目の前の女の子より、茜の事が心配だ。

と言うか、マジで心配なら愛藍が行けば良いのに。

アイツは何やってるんだろう。

そんなことを考えながらたどり着いた目的地。
一軒家の『桑原』と書かれた標札がある家。

車も何もなく、庭と思われるスペースには手入れしていない花壇があるだけ。

その家の扉は少しだけ空いていた。
不用心だなと思いつつ、家のインターホンを押そうとした時、突然大きな物音が半開きのドアの奥から聞こえてきた。

「な、なんだよ!?」

驚いた俺は声を上げてしまった。
同時に嫌な空気がこの家の中から漂ってくる。

まるで負のオーラのような雰囲気がドアの隙間から溢れてくる。

俺は迷っていた。と言うより恐かった。
『この家の中で何が起きているのか?』って。

ヤバイ何がいるのかと考えたら、凄く恐かった。

でもやっぱり『茜に会うこと』が何より一番恐かった。
勢いよく飛び出してみたはいいけど、『この先どうしよう』って不安になる。

足が思うように動かない。
愛藍に助けを求めてみようか。

俺は上着のポケットに入っている携帯電話をポケット越しに触った。
取り合えずここは相談だ。

愛藍も『連絡待っている』って言っていたし。

・・・・・・・・。