赤崎祭で盛り上がる十一月最後の日曜日。
夜になれば街の明かりはいつも以上に照され、寒い気候の中でも楽しそうな声が聞こえる。

俺も『高校最後の祭りなんだから楽しんでみたい』と思うけど、そう上手くいかないものだ。

俺、『江島葵(エノシマ アオイ)』には友達がいない。
高校三年、俺は友達と遊んだことがない。

高校生活を振り返ってみても、いつも実家の花屋の手伝いか、大好きなダンススクールに通うかのどちらかだ。

あと小学二年生の妹、花菜(カナ)と遊ぶことくらい。

そんな俺は、『人が恐い』のが本音。ダンススクールのメンバーとは難なく話せたりするけど、高校の教室にいるといつと不安な気持ちに押し潰される。

優しいクラスメイトは、俺に『遊ぼう』と声を掛けてくれるけど、いつも断っていた。
『実家の手伝いかある』と言って、いつも誘いを断っていた。

それも高校に入学してから今日という日まで。
でも何故か女子が真っ赤な表情で俺に色々と話しかけてくるけど、彼女達は一体何がしたいのだろうか。

ダンススクールの潤先生『葵きゅんは外見だけならモテる』と言っていたけど、本当かな?

ただ俺をからかっているようにしか感じないのだけど・・・・。

でもそんな俺にもたった一人の親友がいる。
それは昔からの親友の柴田愛藍(シバタ アラン)だ。

彼とは中学まで一緒だったけど、高校は別々の学校を歩んだ。

今でもよく彼とは連絡を取っている。
たまに遊んだりもする。

あともう一人。
もう友達とかそういう関係じゃないと思うけど、昔から知っている奴がいる。

名前は桑原茜(クワハラ アカネ)。
茜はいつも無愛想で、他人に興味がない奴だった。

彼女とは今は一切連絡は取っていない。
まあ俺からしたら、茜に会う資格なんてないし。
アイツの人生をどん底に叩き落としたのは、俺のせいだし。

・・・・・・・。

茜の顔を見ると、七年前の出来事が脳に浮かぶ。
茜が生きること否定するような、酷いいじめをしてしまったあの日々のことを思い出す。

アイツは何も悪くないのに、俺はアイツをいじめ続けた。

理由としては、茜の性格がいい人過ぎたから。
『他人に興味がない』と言っておきなら、茜は俺達には凄く優しかった。

茜なら俺が完全に悪いこの一件も、『自分のせい』だと思い込んでしまうと思ったから。
そして茜は俺達から距離を置いて、違う世界に行ってしまいそうだったから。

二度とあの頃の関係に戻れなくなると思ったから。

だから俺と愛藍は茜をいじめた。
『悪いのは俺なんだ』と茜にアピールするように。

そして疎遠になることを避けるために・・・・。
翌々考えたら馬鹿な行動だと思うけど、当時の俺にはそれしかなった。
かなり自分を追い込んで、まともな判断が出来なかった。

それに茜は『自分が悪い』と思い込み、俺達から距離を置こうとしていた。
だから何としても茜を手離したくなかった。

例え『最悪な関係になっても構わない』と思った。
疎遠以外の道なら、何でもいいと思った。

でもそれ、本当にいい加減な決断だと振り返って思う。
だって茜はいじめられることを望んでいないし。

茜の考えを全て無視して、ただ俺のワガママに無理矢理付き合ってもらっただけ。
茜にはまだ何一つ謝っていないし、『ありがとう』とも言っていない。

本当にいい加減な奴だ、江島葵という男は。

情けないし、何やっているんだろう俺・・・・・。