涙を流した私は痛む体を引きずりながら、電気を付けていない暗い家の中を進んでいた。

向かったのは玄関ではなく、一階の父の部屋。
布団と仕事用のデスク、そして海外で買ってきた謎の置物が目立つ部屋。

ここに来た理由は、家族の温もりを感じたかったから。
この体で樹々を追いかける事が出来ない以上、私は待つことしか出来ない。

家族の帰りを待って、慰めてもらうことしか出来ない。

だから早く慰めてもらおうと、父の部屋にやって来た。
ここに来たら『お父さんが側に居てくれるような感覚に包まれるのかな?』と思ったけど、そうでもなかった。

明かりは付けず、暗闇の部屋の中で私は父の布団の上に倒れていた。
『お父さんの香りがするのかな?』って思ったけど、父が日本に帰ってきてからまだ日が浅いからか、父の香りはあまりしなかった。

新品同様のホームセンターにいるようなの香り。

今頃みんなは何しているんだろう。
昨日みたいに、また打ち上げとかしているんだろうか。

またみんなは楽しく騒いでいるのだろうか。

それが少しだけ羨ましいと思ったけど、すぐにどうでもよくなった。
私には関係ないと思った。

だって、一人の方が気が楽だし。
家族に慰めてほしいと思いながらも、結局は一人がいい。

こうやって誰もいない空間に一人で居ることが、凄く幸せだと思う。
それに高校生活も一人だったら、私は幸せだったのかもしれない。

もちろんみんなも。

・・・・・・。
樹々の『就職内定取り消し』って、よく考えたら私のせいだ。
私のせいで樹々の内定が取り消されたんだ。

紗季も私のせいで疑われるようになった。
小緑もお姉ちゃんが疑われて、凄く落ち込んでいた。

だって、『私が過去なんて調べたい』なんて言ったから最悪の結果になってしまったし。
私『が葵と仲良くなりたい』って言ったから。みんなに助けを求めたから・・・・・。

本当に私って最低な女だ。
『恩を仇で返す』ってこういう事なんだろうか。

だとしたら、本当にごめんなさい。
情けない自分に気が付かなくて、本当にごめんなさい・・・・・・。

私には人と関わる資格なんてない。
関わっちゃいけないんだ。

まるで関わる人を地獄に引きずり込む悪魔。
私は人の形をした自覚のない悪魔。

・・・・どうしたらみんなに許してもらえるかな?
何をしたら許してくれるかな?

どんな罪を償ったら、また一人で周囲を気にすることなく生きて行けるかな?

・・・・・・。

それとも、どうやったらみんなと縁を切れるかな?

もうみんなと関わりたくない。
『私と仲良くすると、みんなが不幸になる』って証明された。

だから、みんなと一緒に居たくない。
誰も知らない遠くの街に行きたいけど、そんなお金もないし。

結局、私一人じゃ生きていけないし。

・・・・・・・。