有名な音楽家がコンサートを行ったことのある会場は、約五百人も収容できる巨大なコンサートホール。
地元でも有名な場所。

年に一度の大きなお祭りだからか、演奏者の保護者の数が多いのか分からない。
でも会場は既に満席だった、何人か席に座れずに立って観賞しているしている人もいる。

こんな立派な会場で演奏するとなると、流石に緊張しそうだ。

まあ、いつも緊張しているんだけどね。

舞台では小学生数名による吹奏楽の演奏が響き渡っていた。

演奏曲は知らない。
私自身楽器を吹いた経験はないが、音楽経験者から言わせてもらうと音程は良くない。

まあでも、『小学生なら上出来ではないか?』と勝手に評論した。
と言うか『吹奏楽は私には評価出来ない』と、いい加減な結論を一人で出す。

私は自分の席を探しながら、ホール内を歩く。
二人の先生を探しながら、数ある席を見渡していく。

客席は暗闇でよく見えない。

だからか、私は大きな体格の男の人とぶつかってしまった。
彼の体はまるで巨大な鉄の壁だ、小柄な私はぶつかっただけでも痛みを感じたほど。

ちなみに顔は暗くてよく見えないが、体格に合うお洒落な藍色のスーツだ。
もしかして演奏者なんだろうか。

同時に彼から懐かしい香りがした。
何かを思い出しそうだが、その何かが出てこない。

というかその前に謝らないと。