不気味な真っ黒な雲と共に、まるで嵐が来たかのように雨は酷く降り続けた。
酷く窓を殴るような風の音は不気味さを増す一方だ。

小緑を追った愛藍は帰ってきていない。
こんな雨だし外に出ていなかったらいいのだけど、本当にどこに行ったのだろうか。

でも今は小緑より、自分の方が心配だった。
まるで魂がごっそり抜けたような、『桑原茜という形をした脱け殻』のような私。

樹々が引き続き、隣で優しい言葉を探してくれるけど、今の私には全く届いていない。

不安に完全に押し潰されて、自分を見失っていた。
現実から逃げ出してしまった。

時間は午後の五時十五分。
図書室の鍵を閉めた私と樹々は職員室に向かう。

鍵を返すのと、教頭先生にお礼を言うためだ。

でも今はそのお礼すら言えなさそう。
『無礼な奴』だと思われて、二度と校舎に立ち入る事が出来なくなるかもしれないのに。

何をクヨクヨしているんだろう私。

こんなときこそしっかりしないけないのに・・・・。

「失礼します」

私とは真逆で、その樹々のハキハキした声と共に、ノックを二回した私達は職員室に入る。

室内には教頭先生だけで、女性の教頭先生は大量の書類と向き合っていた。

そして私達の存在にも気が付いてくれる。

「あら、もうそんな時間なのね。私も早く帰らないと・・・・って、山村ちゃんと大きな男の子は?」

樹々は苦笑いを浮かべて答える。

「それが、どこかに行っちゃって・・・・・」

「あら大変。外に出ていないといいのだけど」

私はふと窓の外を見てみた。
変わらない大雨は降り続き『祭りの方は大丈夫なんだろうか』と、絶望に満ちた私でもそんなことを思っていた。

「鍵、確かに受け取ったわよ。で、何か分かった?烏羽先生がビックリした表情で教室を飛び出して行っちゃったから、何かあったのかな?って」

「まあ・・・はい。いろいろ」

教頭先生の言葉に、樹々は苦しそうな笑みを浮かべた。
苦笑いや愛想笑いとは違う、本当に苦しそうな偽りの笑顔。

樹々がそんな顔するってことは、やっぱり樹々も辛いんだ。
私達を苦しめる過去を作ったのは、『いつも一緒に過ごした親友だ』って分かったら、誰だって死ぬほど辛いに決まっている。

「また来るときは連絡してね。色々と準備もあるし」

再び書類に目を通す教頭先生だったけど、突然何かを思い出したみたい。

私を見て、教頭先生は笑みを見せる。