「桑原。七年前の映像を見るか?見るとするならば、『覚悟』を決めることだ」

「『覚悟』・・・・ですか?」

嫌な予感がした。
でも具体的にそれが何なのか分からないから、私は首を傾げる。

「まあ何が言いたいかというと、『七年前の現実に納得出来るか?』って話だけだ。少なくとも俺は、長年悩み続けたお前にこんな悲しい映像を見せたくない」

悲しい?
私が犯人とは限らないと言ったのに、その言葉どういう意味なんだろうか。

「だから、それだけを俺は聞きたい。桑原に真実と向き合う覚悟があるのかと聞きたい」

時々引っ掛かる烏羽先生の言葉。
何故か小緑を心配するような烏羽先生の横顔。

そして『悲しい映像』って、そこには一体何が写っているのだろうか。
でも、今の私にはもう考える暇なんてない。
今の私にはイエス以外の選択肢は残っていない。

だって、既に『賽は投げられている』のだから。
散々逃げてきたし、もう逃げることは許されない。

だから、私は昨日と同じ持ちを答える。

「私はみんなの前で誓いました。絶対に逃げずに真実を見つけること。そして葵と仲良くなる事を。どんな現実でも、例え私と葵が犯人だったとしても、気持ちは変わりません」

その私の言葉の直後、窓の外では雨が降りだした。
快晴だった天気が一転、空は不気味な黒い雲に覆われた。

電気代が勿体無いという理由で電気を付けていなかった室内は外の光を失い、暗い室内に変わる。

まるで今から見る悲しい映像を引き立てるように。

でも私はそんなことで怯みたくない。
周りなんて関係ない。

どんな辛い過去でも、『私は負けない』と誓ったのだから。

これは、七年前の自分との戦いだ。

「分かった。もう何も言わない」

烏羽先生は小さくそう呟くと、ノートパソコンの電源を付ける。

そして映像の入ったファイルを開けると再生ボタンを押した。