「で、帰れ言われたけど帰るの?」

樹々の言葉に、私は即答で答えた。

「帰るわけないじゃん。誰が黒沼の言うことなんか。教頭先生が言った訳じゃないんだから」

「さっすが茜!強くなったね、偉い偉い」

樹々は嫌がらせのように、私の頭を撫でてくる。
愛藍や小緑も見ているし、何だか凄く恥ずかしい。

だから猫のように、馴れ馴れしい飼い主の手を叩いた。
撫でられるのは嫌いだ。

「うるさい。小緑、早く続き調べよ」

呆れた表情で私は席に座った。
大量の卒業アルバムを一つ手に取ると、再び何か手懸かりがないかと隅々まで調べる。

そんな私を見て樹々は小さく笑う。

「素直じゃないよね茜って。こっちゃんもそう思わない?」

「それが茜さんですから仕方ないです」

「まあ確かに。もうちょっと私達に心を開いてくれたら、助けれるのに」

・・・・・・・。

樹々の言う通りだ。
本当に素直じゃないと私も思う。

黒沼と戦ってダメージを受けたのだったら言わないと。
じゃないと、誰も私の心の想いには気が付いてくれない。

『辛い』って言わないと誰も助けてくれないのに。
昨日の紗季の言葉、結局私は理解できていない。

・・・・・・・。

何回目だろう。
『頼れ』と言われても頼れないのって。

もう流石に怒られる。

次は城崎さんにビンタされそうだ。

本当に情けないよね、私・・・・・。