再び花菜は悲鳴をあげる。
今にも泣きそうな表情で、彼女は蹴られた背中を押さえて苦しんでいた。

さっきまでの可愛い表情が一瞬で崩れる。

というか、なんで蹴るの?
いくらなんでもそれは酷すぎる。

まるであの頃の私みたい・・・・・。

・・・・・。

違う。
『みたい』じゃない。

あの頃の私だ。
思い出したくないけど、葵と愛藍に暴力を振るわれていた時と同じ。

それに『また鬼』って。
その少女の言葉はまるで花菜が鬼に仕向けられているような。

花菜ばかり狙われているような。

だけど、私がそんなことを考えている間も目の前の光景はどんどん進んでいく。

少女の一人は、花菜の頭から落ちたカチューシャを踏みつける。
乾いた音と同時にカチューシャは二つに割れた。

そして綺麗な花は助けを求めるように潰されていた。

「ごめん割れた。でもいいじゃん。そんなきったない花なんか頭につけてダッサイし!気持ちわる」

カチューシャを踏み向けた少女の言葉に、花菜は初めて怒った表情を見せた。
でも花菜の目には、既に涙が浮かんでいる。

「これは葵お兄ちゃんが作ってくれたの!だから、だから・・・・」

折れたカチューシャを拾い、大切そうに握りしめる花菜は大きな声で泣き始めた。
一方でその花菜の泣き顔が面白いのか、二人の少女は笑い続けていた。

どうやら今私が見た光景は、『いじめ』で間違い無い・・・・。

ってか今、『葵』って言わなかった?
花菜を助けないといけないけど、色んな思考が邪魔をして体が重たい。

花菜を助けたいけど、やっぱり恐い。
草太や小緑のいじめを見てきたけど、その時とはまた違う感覚。

何て言うか、私自身がいじめられているような不思議な感覚だった。
本当に花菜が自分と重ねて思えて、ただ頭の中が真っ白になっていく。

・・・・・・・・。

「なにこのチビ」

その声を聞いて、私は顔を上げる。
するとそこには、花菜を嘲笑う二人の少女と小緑の姿があった。

見たことのない恐い表情で、小緑は二人の少年を見下ろしている。

そして小緑は怒りをぶつける・・・・。

「ふざけんなこのやろう。いいからあの子に謝れ」

「なに?やる気?私達が小学生だからって舐めないでよ!私、空手やってるから強いよ?」

その直後、少女の一人は小緑の腹に不意打ちの拳を一つ入れた。
想定していなかった少女の行動に、恐い小緑の表情が歪んだ。

そしてかなり痛かったみたいで、小緑は床に膝を付いた。
苦しそうな表情に小緑は変わる。

それでも小緑は目の前の二人を睨み付ける。

流石に私も許せない。
小緑まで手を出すなんて、ガキでも容赦しない。

気が済むまで殴りたい。

でも、何故かやっぱり体が動かない。
足が震えて、何故だか立つことが出来ない。

目の前の二人の少女が昔の葵と愛藍に見えて何も手出しが出来ない。

何も出来ない私は恐くて目を瞑ってしまった。
情けなく目を逸らしてしまった。

本当に情けない・・・・・。

・・・・・・。