ルビコン

小緑の元気な背中を見送った私は慌てて図書室に入る。
『また樹々と愛藍は喧嘩していないかな?』って思って、私は恐る恐る図書室の扉を開ける。

・・・・・・。

すると、二人はお互い違う席で調べものをしていた。

「おう。どこいってたんだよ」

愛藍の手には子供向けの大きな図鑑があった。
何の図鑑なのか、愛藍の手が邪魔でよくわからない。

「ごめん、ちょっと小緑と調べもの。手懸かり見つけたんだ」

私が言った手がかりという言葉に、直ぐ樹々は反応する。

「ホント!?手懸かりって何?」

愛藍から二つ離れた席で樹々は動物図鑑を見ていた。
言っていた通りウサギの事を調べている。

私は答える

「裏庭に設置された監視カメラ。当時の映像が残っているか、小緑が先生に聞きに行ってる」

「そうなんだ、結果しだいじゃ、かなりいい方向に進むかもね」

樹々の言う通り、そうだと信じたい。
でも少しだけその監視カメラに対して不安な私もいる。

「どうかな。『茜と葵が花を食わせた』って証明されるだけじゃねぇか?」

「あーもう!なんでそんなこというかな!」

樹々には悪いけど、愛藍の言う通りだ。
そこにペレッドの変わりに花を食べさせた私達が映っていたら、ただ自首をしてるようなもの。

と言うか、本当に花が原因でウサギが死んでいたら、私はどうするんだろう。
勢いよく昨日は『当時の原因を調べたい』と言ったけど、真実も何も無かったら私どうするんだろう。

・・・・・・。

でもその時は親友が私を助けてくれるだろう。
目の前の私の仲間なら、絶対に助けてくれる。

「そのために花の情報を集めている。別に茜と葵が食わせた花が無害だったら、茜が責められる理由がない」

愛藍が読んでいるのは大きな図鑑。
さっきは手で隠れて見えなかったけど、愛藍は花の図鑑を読んでいる。

と言うか何だか面白い。
愛藍が私のために頑張っているのはわかるけど、大きな体格や男らしい愛藍に花ってなんかスッゴい似合わない。

背の高くてイケメンの葵なら似合いそうだけど。

「何笑ってるんだよ茜」

「別に。ただ面白かっただけ」

「あ?」

愛藍は似合わない顔で花の図鑑を隅々まで確認していた。
もうそこまで来たら、何だか愛藍が可愛く見えてきた。