下から見上げたら気付かなかったけど、三階の近いこの場所から見たら確かに不思議なものがある。
小緑が下から見上げていた物がこれだと理解したら、私は微かな希望に包まれた。

それは監視カメラ。
小さくて古いものだけど、そこに何か写っているのではないだろうか。

例えば、『七年前のあの日の出来事』とかも・・・・・・。

「ずっと前から気になってました。『学校の至るところに監視カメラが仕掛けてある』って聞いたので。もしかしたら裏庭にも監視カメラがあるのじゃないかな?って。昔もこの位置にカメラが設置されていたなら、何か写っているのかもしれません」

私と同じことを口にする小緑の表情はいつもと変わらない。
大人のような落ち着いた表情で小緑は冷静に答えた。

でも『これが中学一年生の洞察力なのだろうか?』と、私は小緑に疑問を抱いた。
いくら推理ゲームが好きだと言っても凄すぎる。

紗季にしても、『この姉妹は年齢を誤魔化しているんじゃないか?』っていつも思わされる。
私は答える。

「うん、そうだね。早速先生にデータが残っているか聞いて」

「僕が聞いてきます。それに二人が心配ですし」

小緑に言葉を上書きされて、私は思い出す。今の図書室には樹々と愛藍の二人きり。
『また二人が喧嘩しているのかな?』と不安になるけど、今はそれ以上に気になることがある。

「う、うん。そうだね・・・・。それと小緑、アンタ本当に小緑?」

私の意味の分からない質問にも、小緑は冷静だった。
まるで『その言葉を待っていました』と言っているような落ち着いた表情。

正直言って、今の小緑がちょっと怖い・・・・。

「『違います』って言ったら?」

「うーんどうだろ・・・・。でもびっくりするかも」

確かに見た目は私のよく知る山村小緑だ。
いつものヘッドホンを首にぶら下げているし間違いないだろう。

でもやっぱり疑ってしまう。理由はとても中学一年生には見えないから。
雰囲気も落ち着いて、考えていることもみんなと少し違う。

その時、ふと思ったことがある。
『小緑の親友の金子麦って男の子はどんな子だったのだろうか』って。

『小緑は年齢には相応しくないほど色々経験しているから今の姿に辿り着いたのかな?』って思ったけど、多分違う。

『姉の紗季の影響かな?』って思ったけど、これも多分違う。

きっと金子麦(カネコ ムギ)と言う少年の影響なんだと思う。
彼は正義感の強い男の子と聞いたことがある。

悪いことを許さない、真実を求める漫画やゲームの主人公のような男の子。

彼が漫画やゲームの主人公なら、小緑からも同じようなものを感じる。
校則を破るの困った女の子だけど、小緑も正義感は人一倍強い。

困っている人の見方にいつもなってくれる。

そんな小緑が羨ましいと最近いつも思う。
強気な彼女みたいに私もなれたらいいけど、何故か小緑の表情が曇る。

突然弱音を吐く小緑。