「茜はアンタのことを許したとしても、あたしはまだアンタのことを許してないから」

早く合流しないといけないのに、遠くから聞こえる樹々の言葉で私の足が止まった。
初めて聞く樹々の怒ったような声を聞いて、私は怯んでしまった・・・・。

校舎の角から私はそっと樹々の様子を伺う。
すると樹々が愛藍に怒った表情を見せていた。

樹々は続ける・・・・。

「茜が苦しむのはアンタのせいだよ!わかってるの?」

「わかっている。じゃないとここには来ていない」

「そう言ってまた茜を貶めるつもりなんでしょ?最初から葵ってやつとグルなんでしょ?また茜をいじめるために接近しに来たんでしょ?」

「そんなことはない!ただ俺は、また茜と仲良くしたかった」

「茜を散々いじめておいて、よくそんなことを言えるよね?」

樹々と愛藍の会話を聞いて、私は全く理解できなかった。
意味がわからない。

なんで樹々が愛藍に怒っているの?
なんで?

って考えている暇なんてない。そんなことよりすぐに樹々を止めないと。
じゃないと愛藍が可哀想だ。

愛藍も私と同じ思いで今まで生きてきたのに。
そんなことを言われたら、いつも強気の愛藍も落ち込むに決まっている。

この二人を一緒にした私が馬鹿だったと後悔。
こんなとき、二人になんて言葉をかけたらいいのだろうか。

どうやって止めたら良いのだろうか。

でも私の体が畏縮して思うように動かない。
声も出てこない・・。

二人の会話は続く・・・・。

「あたしは絶対にアンタ達のことを許さない! 茜をいじめたのは事実なんだから、そこは絶対にあたしが許さない!アンタ達がそんなことをしなかったら、茜は幸せに過ごしていた!アンタ達が酷いことしたから茜は心を痛めた!わかってるの?」

愛藍の表情がどんどん曇っていく。
まるで自分の辛い過去を掘り返すように。

ってそんなことしなくてもいいのに・・・・・。

それにもう私と愛藍は仲直りした。
こんなことを樹々には言いたくないけど、何も知らない樹々に口出ししてほしくない。

みんなが幸せだったら、それでいいじゃん!

でも樹々の立場から見たら、樹々は幸せじゃないのかもしれない。

私のようないじめられた本人が、『いじめた人間と仲良くなった』って言っても納得できないって言うか・・・・。

樹々の言う通り、いじめた過去がある限りは、その過去はどつやっても消えないし。
でも昨日城崎さんから『過去に囚われても意味がない』って教えてもらったし。

でもなんだか今は違うような・・・・。

結局、何が正解なんだろうか。
もう訳が分からなくなってきた。

考えれば考えるほど頭が痛くなる。

どうしたらいいの・・・・・。