「そうですね。明日は忙しくなりますし。茜さんの変わりに頑張りましょう。桔梗ちゃんも手伝ってくれますか?」

その声に、中央のテーブルを拭き上げる桔梗さんは反応する。

「もちろんです。樹々の友達のお願いならなんでも聞きます」

二人の言葉に『空耳かな?』って思ったけど、東雲さんと桔梗さんは私を見て心強い表情を見せてくれる。
まるで『任せろ』と言っているような強気な表情。

城崎さんも笑みが溢れる。

「交渉成立だね。まあでも、流石に茜ちゃん一人で調べるのはあれだから、樹々ちゃんも茜ちゃんの側にいてあげてね」

「モチロンです!茜はあたしが絶対に守るから!」

城崎さんの言葉の直後、真後ろから樹々の声が聞こえた。

と言うかビックリした。
私は樹々のいる方を振り返ろうと思ったけど、樹々が背後から抱きついてきて後ろを振り向く事が出来ない。

暖かい温もりを感じるだけ。

そして愛藍の声も聞こえる。

「じゃあ俺も!って言うか俺と茜の問題だし」

愛藍の姿を確認したいけど、樹々が邪魔で愛藍の姿が確認できない。
本当に樹々、どいてほしい。

城崎さんが答える。

「ありがとう、愛藍くん。明日の予定とか大丈夫なの?」

「へーきっす。明日も予定なかったですし」

「助かるわ。ありがとう」

城崎さんは嬉しそうにシフトを書き換える。
私の所に東雲さんと桔梗さんの名前を書き込み、本来明日は城崎さんと一緒に厨房を手伝ってもらう樹々の名前も消した。

ホント、いろんな人に支えてばっかり・・・・・。

そしてまだまだ私を支えてくれる人がいる。

「だったらこっちゃんも連れていってくれないかな?この子、推理ゲームのやり過ぎで鋭い思考になっちゃったし。多少の役に立つと思うし。それにこっちゃんが去年まで通っていた学校だから、力になると思うし」

「うん。茜さんのためなら頑張る。さきねえのためにも」

後ろから紗季と、寝ていたはずの小緑の声が聞こえる。
二人の表情を確認したいけど、本当に樹々が邪魔だ。

何て言うか、気持ちの悪い変態のように私の首元の臭いを嗅いでいるし。

いや、今日は動き回って汗だくになったから本当にやめて。
いい加減離れてほしい。

でも、そんな私を助けてくれる『仲間』がいる。

「樹々ちゃん、茜ちゃんが嫌そうな表情をしているよ」

そう言って私に手を差し出してくれたのは橙磨さんだった。
私から少し離れたカウンター席で携帯電話を触っている橙磨さん。

一方橙磨さんの言葉に樹々は渋々納得すると、私の元から離れた。
そして私の隣に樹々は座った。

橙磨さんは続ける。