「私と葵、そして愛藍があんな関係になってしまった元凶、『ウサギが死んでしまった事件』を追求します」
私の思いきった発言に、城崎さんは驚いた表情に変わる。
同時に近くにいたみんなの表情も大きく変わった。

愛藍から『マジかよ』って聞こえた気がする。

「ほう。こりゃまた大きく出たわね。どうしてそう思ったの?」

その城崎さんの言葉に私は答える。

「だって、そもそもその事件がなかったら、私達の関係は壊れなかったですし。未だに私が犯人みたいな扱いになっているし。後々考えたら嫌ですし・・・・・」

私達の関係は、飼育委員で育てていたウサギが死んでから狂い始めた。
私は葵にテキトーでいい加減な言葉を言ってしまったから、葵は私を訴えた。

それで私は彼らから酷い罰を受けた。

でも改めて振り返ったら、私が犯人の証拠はない。
ウサギが死んだ原因も私は詳しくは知らない。

葵が食べさせた花が原因で死んだとは、一度も知らされていない。
それは今ではもう深過ぎて、手が出せない真っ黒な闇。

学校側が答えが教えてくれなかった以上、その過去は一度は完全に封印されてしまった闇。

でも、そこに本当の真実が眠っているなら、私はその闇に立ち向かいたい。
そこに葵と仲直りをする鍵があるなら、私は何でも挑戦する。

「だから私、あの事件を調べます。本当の事が分かったら、私も葵の存在に怯えなくてもいいかもしれないですし」

「それ、本気で言っている?」

「本気じゃなかったら、臆病な私が無茶な事を言いません」

私は真剣な眼差しで城崎さんに訴えた。
いつもすぐに目を逸らしてしまう私だけど、今は違う。

『私を見てほしい』と訴えるように、城崎さんの優しい目を見つめた。

そして城崎さんも賛成してくれるのか、小さく二度頷く。

「そうね。茜ちゃんが言った事だし、否定する気もないわよ」

城崎さんは立ち上がり、レジ近くにある大切な書類等が入っている引き出しを開けて小さなノートを持ってきた。

それは従業員のシフト表みたいで、とあるページには『赤崎祭二日目のシフト』が詳しく書かれている。

そこには私や橙磨さんや紗季達の名前もあるけど、城崎さんは屋台の欄に書かれていた私の名前を赤いペンで書き消した。

そして、城崎さんは私の背中を押してくれる・・・・。

「だったら、明日にでも調べに行ってきなさい。人の少ない日曜日とか現場を抑えるチャンスだし。どうせ小学校に行くんでしょ?」

小学校。
その言葉を聞いた私は幼い頃の葵の表情が脳裏に浮かんだ。

愛藍と一緒にイタズラをしていた、悪そうな彼の表情を思い出した。

だけど今の現状を理解したら、私の脳裏から昔の葵の表情はすぐに消えてしまった。

「えっ、でも明日は」

『一番忙しい日ですよね?』って続けて言おうとしたけど、笑顔を見せてくれる城崎さんの言葉に書き消された。

「社長。大丈夫ですよね?私も茜ちゃん分までがんばりますし」

椅子に座って、ノートパソコンで作業をしていた東雲さんは、城崎さんの笑顔を見て答える。

って社長?