音楽祭が開演された。
『他の演奏には興味がない』と言ったら良くないのだが、実際興味がない。

だから私は開演された後は、建物の中にある休憩室にいた。
広く大きく、食堂のような休憩室は私一人の貸切状態だ。

基本的には煙所や自販機、それに椅子と机しかない場所。

私一人しかいないのに適度に冷房が効いている。
気を抜けばすぐに寝てしまいそうだ。

ちなみに演奏者の控え室なんてない。
演奏者はチームごとに分かれた客席に座り、自分の順番の二つ前になったら演奏者専用通路を通って舞台裏へ行く。

私の場合は着替える必要があるので早めに舞台裏へ行くつもりなのだが、順番はまだまだ先だ。

そんな今、私は何もすることがない。
携帯電話が手元にあってもすることがない。

ゲームもしないし、携帯電話でする事と言えば電話するか携帯電話に取り込んだ私の大好きな作曲家『K・K』の音楽を聴くことぐらいだ。

あとメールくらい。
今では世間一般的には有名なSNSのアプリも、怖くてインストールしたことがない。

だから私は未だにメールを使っている。
暇潰しに友達の松川樹々(マツカワ キキ)に送ったメールもまだ返事か返ってこない。

でも確か樹々、今は就職活動中で『今日は企業説明会があるから忙しい』と言っていたっけ。
多分私と違って忙しいのだろう。

私もこんなところにいる場合じゃないはずなのに・・・・・。

でももう一人、私にはメールを送る相手がいるので試しに送ってみた。

相手は山村紗季(ヤマムラ サキ)。
同じクラスメイトで、保健室登校で出会った小学校からの友達だ。