ルビコン

仕込みが終わった城崎さんはカウンター席で東雲さんと何かを話し合っていた。
流石に城崎さんも疲れた表情。

煙草に火を付けると、大きなため息を一つ吐いていた。

でも朝からずっと動き回っているし、当然だよね。

「城崎さん」

そんな城崎さんに、私は声をかける。
一方の城崎さんはお酒と思われるグラスを一口飲むと、優しい声で答えてくれた。

「葵くんに告白する気になった?」

「違います」

呆れた表情で答える私の声に、城崎さんの表情が曇る。

「相変わらずヘタレね」

いや、私もそれが出来たらしたいけど、まだ無理だし。
それはもう少し後っていうか・・・・。
城崎さんに隣に座るように指示された私は、カウンター席の椅子を引いて座る。

おつまみに柿ピーの入ったお皿を城崎さんから渡されたけど、今は食べたい気分じゃない。
それに美味しい料理でお腹一杯だし。

そして城崎さんは本題に入った。
真剣な表情で私を見つめていた。

まるで人生の答え合わせをするように。

「んで、茜ちゃんはどうしたいの?どうやって葵くんと仲直りするの?茜ちゃんの答えを聞きたいな」

城崎さんの言葉に、私は小さく頷く。
そして小さく深呼吸を一つ。

・・・・・・・。

このパーティーの間、私はこれからの行動をずっと考えていた。
葵と顔を合わせて、私が謝るのがベストなんだけど、今の私にはまだそれが出来ない。

ヘタレだから、まだちゃんと葵と向き合って話が出来ない。

だから、方向性を考えた。
葵と会わずに彼と仲直りをする方法を。

その目標が無事に達成した頃には、お互い面と向き合って話せるような環境を作ることを考えてみた。

でもそれは絶対に、私一人に力じゃ出来ない事・・・・・。

・・・・・・。