「葵さん、いい人だよ。いつも僕を笑わしてくるし、今の葵さんは悪い人には見えない。それは僕が保証する。何より僕が瑠璃と仲良くなれたんだ。茜さんも絶対に出来るって!それも僕が保証するから。だから、がんばれ!」

年下の中学生の女の子に励まされて、私は何が何だか分からなかった。
怒られると思ったから理解できなかった。

でもゆっくり時間をかけて、小緑の言葉を理解したら、勇気をもらった気がした。
言葉通り『頑張れ』って背中を押されているようで、私は小さく頷いた。

「うん」

そして涙が出そうだった。

本当に、泣き虫な茜だ・・・・。

でも直後、小緑は、悪魔のような笑みを私に見せる。

私の表情も真っ青に変わる・・・・。

「それじゃあこの話はこれでおしまい。んじゃ、本題に移ろうか?泣き虫な茜さん」

「あっ、やっぱりですか・・・・」

それからみっちり小緑に怒られた・・・・・。

『なんで練習した僕のダンスを見てくれないんだ』って。
『アンタは本当に何しに会場に来たんだ』って。

次々出てくる小緑のお怒りの言葉、私は謝ることしかしか出来なかった。
せっかく練習したのに、見て欲しい人が見ていなかったら誰だって怒る。

葵も小緑と一緒の気持ちなんだろうか。
『現役最後のダンスだ』って言っていたのに、私に見てもらえなくてガッカリしていたりするのだろうか。

そう思ったら私、酷いことしたな。
大切な人が練習したパフォーマンスを見せてくれているのに泣いちゃって、そのパフォーマンスを見てないなんて本当に申し訳無い・・・・・。

・・・・・・。

一度過ぎた時間は二度と戻せない。
どれだけ叫んでワガママを言っても、二度と同じ時間は過ごせない。

やり直すことは出来ない。

だからこその、城崎さんのさっきの言葉なんだ。
『過去なんて引きずるためにある訳じゃない』って。

本当にその通りだと私は思う。
済んだことを根に持っても、意味がない。

だからもっと自分に自信を持って今を生きないと。

じゃないと私、一生後悔する。

曖昧な人生を私は進みたくない。

それに前向きに人生楽しまないと、生まれ来た意味がない。

何より、私は後悔したくない・・・・。