「俺の顔見たくなくてもいいいど、お前は寂しいんじゃないのか？昔はよく俺の名前を呼んでいたじゃねえか。俺と葵が居なかったら、何も出来ない甘えん坊みたいに」

本当に、なんで愛藍は昔の事をこんなに愛藍は覚えているんだろうか。
どんな記憶力をしているんだろうか。

本当にムカつく。

これじゃあ愛藍にやられっぱなしだ。

「うるさい！もう昔との私とは違うの！バカにしないで！」

「昔って、お前はお前だよ。茜は茜だよ。みんなから変わったって言われても、俺から見たお前は何にも変わってねえよ」

それが愛藍から見た『私の印象』だった。
変わったと思う自分もいるけど、変わっていない自分もいる。

そこに気付ける人間って、昔から私のことをよく知っている人だけだ。
だから、愛藍は『本当に私の事を覚えてくれていたんだ』って思ったら心の底から嬉しく思った。
本当に嬉しい。

「そうだよね。愛藍も変わってないし。昔から私を困らせることばかり考えているし。そろそろ本気で泣いちゃうかも」

悪気のない私の言葉に、愛藍の表情が曇っていく。
申し訳なさそうな表情を見せている。

もしかして、これが愛藍の弱点なんだろうか。
昔は無愛想で泣き顔なんて愛藍に見せたことないし。

愛藍に初めて涙を見せたのも、愛藍と再会したすぐの出来事が原因だ。

私が草太のお母さんに訴えた時はずっと泣いていたけど、愛藍が『私の事をずっと心配してくれていた』と言うことはよく覚えている。
ずっと側で、私を支えてくれたということはよく覚えている。

泣きながら私は本音を語ったことを今でも鮮明にに憶えている。

でも、愛藍は昔から性格が悪い。

「いや、それは悪かった。お前が『泣き虫』って思わなかったから」

申し訳なさそうな謝罪の言葉なのに、何故だか愛藍の表情は晴れていく。
そしてニヤニヤと笑いを堪えきれずに大きな声で愛藍は笑った。

同時に私はまた愛藍に喧嘩を売られているということに気が付いた。
愛藍も大きな声で笑い出したし、もう限界だ。

絶対に許さない！

「泣き虫ってなにさ！」

カウンターの椅子で、このふざけた愛藍を殴ってやりと思った。

いや、もう殴ろう。
我慢の限界はとっくの前に超えている。

でも今の私には敵が多い・・・・。