ルビコン

「昔みたいに戻ろうぜ茜。もちろん葵も入れてさ。三人でまた一緒に遊ぼうぜ」

その愛藍の言葉はまるで『一筋の光』のように感じた。
真っ暗な私の人生を照らしてくれる希望の光。

それは私の夢だ。
私のゴール地点だ。

この数ヵ月、そのゴール地点に向かうことだけをただひたすらに考えてきた。
『また三人で遊ぶ』って、その言葉を信じて私はこの数ヵ月間生きてきたんだ。

樹々に誘われたあの日のカフェ会。
そして葵と再会したあの日から全ては始まった。

その日から私は『人生を頑張ろう』と心に決めた。

だから、早くその夢を達成したいな。

愛藍や葵と一緒にまた遊びたい。

「うん。そうだね」

私は力強い満面の笑顔を愛藍に見せたら、また頭を叩かれた。

ってもう!

「痛っ!ってまた叩く!なんでさ!」

「返事に元気がなかったから。もっとデカイ声で返事しろよ」

「はあ?私が体育系じゃないの知っているでしょ?」

「おう。だから言ったんだよ。その方が面白いし」

段々腹が立ってきた。

それに愛藍が私の頭を叩きたいだけじゃないの?
それ。

私は愛藍への反撃を考えた。
愛藍が悲鳴を上げそうなほど、彼を懲らしめる手段は無いだろうか?

そういえば愛藍、『私の事が好きだ』って言っていたっけ。
親友としてなのか、女としてなのかは分からないけど、確かに言っていた。

その逆の事を私が言ったら、愛藍は落ち込むだろうか。

・・・・・試しに言ってみよう。

「もう愛藍なんて嫌い。顔も見たくない」

「あ?悪い、聞こえなかった」

私は疑問に思った。
『なんでこんな近い距離なのに聞こえないかな?』って。

愛藍とは手が届く距離なのに。

私はもう一度言ってみる。
それが愛藍の罠だとも知らずに・・・。

「だから、愛藍の顔なんか見たくないって言ったの」

言って気が付いた。
愛藍の顔が笑っていることに。

よくイタズラをしていた、あの頃の表情にそっくり・・・・・。

ってあれ?