「んで、茜ちゃんは葵くんと仲直りしたの?」

城崎さんの視線が私に変わっていることに気が付いた。
慌てて今日の出来事を思い出して素直に答えた。

「いや、その・・・・。また吐きそうになって、泣いちゃって・・」

「また?何でいつも成長しないかな?」

本当に私もそう思う。
自分が情けなくて、悔しい。

でもそんな私に、城崎さんは『興味のある言葉』を言ってくれる。

「でもそれが茜ちゃんだからね。『悪い意味』じゃなくて、『いい意味』で。頑張っているから、吐きそうになったんじゃないの?そして泣いちゃったんじゃないの?」

「どういうことですか?」

「そりゃ『茜ちゃんが現実に向き合っている』って証拠。確かに私と紗季ちゃんで計画して、葵くんと茜ちゃんを合わせようとしたのは事実。私が小緑ちゃんのダンスを見に行くのを提案したのは、そこに葵くんもいるから。『会ってゲロの一つや二つくらい吐いてこい』って思ってね」

ゲロという言葉に少しだけ引っ掛かったが、私は城崎さんから視線を逸らさなかった。
偉大な師匠の言葉のように、城崎さんに耳を傾ける。

「だから『葵くん見て気分が悪くなった』って言うのは、茜ちゃんが葵くんと向き合おうとした証拠。結果はどうであれ、『その行動自体が凄いこと』だと私は思うから。百歩くらい成長したんじゃないかな?紗季ちゃんにも慰めてもらったんでしょ?」

「なんで知っているんですか?」

「そりゃ小緑ちゃんが怒っていたからね。『僕のダンスを誰も見てくれなかった』って怒ってたよ」

あーそうだった・・・・。早く小緑に謝りに行かないと。
じゃないとあの子に何されるか分からないし。

たまに何考えているか分からない時もあるし。
下手すりゃコテンパンにされる・・・・。

そんな真っ青になった私の表情を見た城崎さんは小さく笑うと続ける。

「でもさ、それでもいいんじゃない?茜ちゃんが今日で挫けずに、『また頑張ろう』と思ったなら。それなら明日も頑張ればいい。明日を頑張って、『また明後日も頑張ろう』って思ったらそれでいい。そうしたらいつの間にか『夢』は叶っているし」

夢。
あまり聞き覚えのない言葉に、私の中で疑問点が浮かぶ。

「夢?ですか?」

「茜ちゃんの夢は何?葵くんと仲直りすることでしょ?」

「はい・・・・」

当てられて、私には小さく返事をするしか選択肢は残っていなかった。
本当にいつも、城崎さんに頭の中を覗かれているみたい。

「じゃあその夢を私と一緒に叶えようよ。もちろん私だけじゃなくて、愛藍くんや樹々ちゃんに紗季ちゃんや小緑ちゃんと橙磨くんと一緒にね。知恵ならみんなが貸してくれるから。たまには友達を頼りなさいよ」

城崎さんのその言葉を聞いて、『私は紗季に全く一緒の事を教えてもらったんだ』と思い出す。
昼の小緑の華麗なダンスを見せてくれた時、お姉ちゃんのような紗季の言葉を・・・・。