コイツら見ていると腹が立ってきた。

またあの時のように抵抗しても良いけど、今はダメだ。
仕事中だし、色んな人に迷惑掛かっちゃうし。

だから、早くこの場から離れてほしい。
それが今の私の願い。

でも内心は震えいるのが本音。
『この人達に今から何をされるんだろう』って怯えているのが今の私。

だって前はボコボコされたし。
今回も同じような事をされるかもしれないし。

橙磨さんもいないし・・・・・。

「おい、なんとか言ってみろよ!灰根さんが怖くて声が出ないのか?あぁ?」

コイツら、今度はメニューブックを地面に叩き落とした。

・・・・・・。

ってか、なんなの?
マジで。

お前らから見たら、たった一枚の紙切れにも見えるかもしれないけど、それは私にとっては大切なもの。
それは紗季が一生懸命作ってくれたもの。

寝る時間も削って、樹々に内緒で紗季が作ってくれた大切なメニューブック。
頑張っているみんなの邪魔をすることだけはしてほしくない。

というか、そんなことしたら私が許さない!

「何してくれるのさ!」

無意識に私はそんな言葉を呟いていた。
仕事中だと言ったけど、もう限界だ。

目の前の奴等が許せない。
我慢出来ない。

私は怒り狂って、目の前の二人を睨み付けていた。

あの時と同じだ。
勝てもしない喧嘩を買ったあの日と同じ。

今回も勝てる見込みなんて一切ないのに、何やってるんだろ、私。

一方の灰根はまた嬉しそうに嘲笑う。

「いいねぇ、そのカオ。またあの時みたいにぶん殴るけどいいのかな?」

「いや、もう喧嘩売ってきたんだからいいでしょ?」

灰根は一緒にいる男の言葉に頷き、屋台のカウンター越しに私の髪を掴む。
『痛い』と私が叫んでも、灰根は離してくれない。