一人になった私はため息を一つ吐いた。
前半の売れ行きが好調過ぎてか、後半は殆どお客さんが来ない。

ガス代が勿体ないからって言う理由で、暖めているスープの火も消しているし。
でも今の私には丁度いいかも。
レジも一人でやらないとダメだし、暇な方が少し有り難いかも。

周囲を歩いている人はかなり減った。
せいぜい五六人くらい。

それに今は大きな広場で何やらイベントをしているみたい。
殆どの人はその大きな広場に集まっているんだろう。

愛藍や葵もそっちにいるんだろうか?

そんな中、私の視線に不良のような男が二人入ってきた。
つまらなそうに周囲を見渡している。

ってコイツらって・・・・。

でも思い出せない・・・・・。

「この辺り殆ど人がいないっすね。灰根さん」

「どうせ今にも潰れそうな店ばっかなんだろ?こんなふざけた店に客が集まるわけねーだろ?」

「それもそーすっね」

その二人の会話を聞いていた私は『つまらないなら帰れば良いのに』と思っていたら、その男の一人と目が合ってしまった。

怖そうな目付きで、彼は私を睨み付ける。

「あ?何見てんだテメー。って灰根さん!コイツは確か!」

灰根(ハイネ)。
その聞き覚えのある名前を聞いて、私は目の前の奴等が誰なのか思い出した。

カフェ会の翌日、猫をいじめていた不良達等。

そして橙磨さんと話すキッカケを作ってくれた人達。

「あ?あぁ本当だな。俺らを馬鹿にしたあの時の嬢ちゃんじゃねえか。元気しているのかよ」

彼らは不気味な表情を浮かべて、ゆっくり私達の元まで歩み寄る。
お客さんとしてなら私も頑張るけど、それ以外ならお断りだ。

「い、いらっしゃいませ。メニューは、お決まりですか?」

一応私は必死に笑顔を作った。
震えた声と共に、『今は仕事中なんだ』と自分に言い聞かせる。

そんな私を、灰根は嘲笑う。

「いらっしゃいませってなんだよ。こんなしょうもない店で働いているのか?つか、俺の質問に答えろよ」

・・・・しょうもない店?

「きゃはは!灰根さんの声にビビって、声も出ないのか?あの時の威勢はどうした?」

灰根と一緒にいるしたっぱのような男は、私のいる屋台を蹴り上げた。
まるで『ざまあみろ』と言っているみたいだけど、この人達は何がしたいのだろう。

橙磨さんと東雲さんが準備してくれた屋台を蹴って、本当に何を考えているんだろう。
というか、なんで人を蹴落とそうとするのかな?

なんで他人に迷惑をかけないと生きていけないのかな?

『世界の中心は自分だ』とかでも思っているのかな?