城崎さんは相変わらずだった。
屋台も店内も忙しいのに、お客さんや手伝ってくれるみんなに笑顔を振り撒いている。

毎日三時間しか寝ていないと言っていたけど、本当に身体は大丈夫なんだろうか。

私達と違って早朝から休憩なしで働き続けているし。
本当に凄い。

今日の祭りが終わってから『みんなで打ち上げパーティー』もするって言っていたし。
考えていることも本当に凄い・・・。

そんな凄い人に囲まれているんだ。

私も頑張らないと。

日が落ちて夜になると、この屋台も終わりらしい。
詳しいことは知らないけど『八時間以上の営業』は禁止されているみたい。

飲食経営って何だか難しい。

そんな中、城崎さんは屋台に顔を出す。

「橙磨くん。悪いんだけど、買い出しに行ってくれないかな?」

名前を呼ばれた橙磨さんは、少し驚いた表情を浮かべていた。

「でもここ、僕が離れて大丈夫ですか?茜ちゃん一人になっちゃうし」

「大丈夫!それも試練だから。むしろ当たりの強いお客さんが来てほしいって言うか。『クレームで茜ちゃんを苦しめたい』って言うか」

「そういうことなら賛成だね」

いや、この人達マジで何言ってるんだろう?
何考えているんだろう?

頭おかしいんじゃないの?
そんな平気で訳の分からない事を言う城崎さんや橙磨さんが恐ろしいと私は思う・・・・・。

でも確かにこの屋台営業は自分との『戦い』って言うか、『試練』って言うか。
お陰でまた少しは成長できたと思うし。

でもクレーム対応はちょっと違うような・・・・。

橙磨さんは『僕が離れて一人じゃ寂しいよって理由で泣かないでね』って私に言い残して屋台から離れる。
本当に、あとからでも良いから一発彼を殴りたい。

お金と買い物リストのような紙を貰った橙磨さんは、アルバイトで来ている大学生の自転車に跨がりカフェから離れた。
最後まで笑顔で一人になった私を見ている。

そのまま壁にぶつかって怪我したら良いのに。