舞台では小緑が躍り続けているのに、祖父から言われたビデオカメラも回さずに、今はただ私を慰めてくれる。
もうそれでお腹がいっぱいだというのに、紗季は私に全力を尽くしてくれる。

同い年なのに、何もかも紗季には敵わないや。

「茜、頑張ろうぜ。俺、相変わらず葵と仲がいいし、それに葵の奴、『紗季の妹ともよく話している』って言ってたし。直接葵と話が無理なら、俺を通じて話してくれればいいし。その・・・俺もお前の力になりたいし。つうかこんな関係になったのは、俺らのせいだし」

隣から聞こえた愛藍の声はとても暖かかった。
同時に愛藍もそんなことを言えるんだと思ったら、胸が痛くなった。

まるで自分だけが取り残されたような感覚。
みんなそれぞれ成長しているのに、私だけ置いてきぼり。

みんな小さな翼で空を飛んでいるのに、私にはまだ翼すら生えていない。

同じ年月を生きてきた親友なのに、どうしてこんなにも差がついてしまったんだろう。

でも、そこを気にしたらダメなんだ。
昔からそうだ。私、常に誰かを比較して生きてきた。

他人に興味がないと言って来たのも、本当は興味があったからそんなことを言っていたんだ。

周囲の人に、『他人を意識している』と思われたくないから、私は周囲には嘘を付いていた。

『他人に興味がない』と、嘘をついていた。

なんで興味があるのかって言われても、正直自分でも分からない。
ただ一つだけ言えるなら、『寂しかったから』じゃないかな?

それと、親友のことをもっと知りたいと思っていたし。

小学生の頃は、愛藍や葵がいつも一緒にいた。
でもある日から私と二人は離れてしまった。

それから直ぐに紗季と出会った。
でも中学生になったら、紗季とも離れてしまった。

中学生になってから、その気持ちは人一倍強くなった。
一人で居るのが恐かったから、私は誰かのグループに入りたいと思った。

新しい友達を作りたいと思って、クラスメイトの男女を一人でよく見ていた。

でも私は極度の人見知り。
そもそも愛藍や葵、そして紗季しか話したことがない寂しい人間。

友達になりたいと思う相手に、どうやって声をかけたらいいのか、全く分からない。

きっと失敗するのが怖かったんだ。
変なことを口走って、クラスメイトに嫌われて、いじめの的にされたくないと思った。

もうあんな辛い出来事はごめんだと思った。

だから、結局中学三年間誰とも会話することがなかった。
一度だけ向こうから遊びに誘われたこともあるけど、怖くて私は友達になるチャンスを踏みにじった。

バカだよね、私。
『友達が欲しい』といいながら、何も努力せずにただ相手からの誘いを待つだけ。

来てもそのチャンスをドブに捨てるし。
何様なんだろう。

本当に、紗季に言われた通りだ。