「葵くんを感じた時に出て来るその感情なんてを吹っ飛ばしちゃったらいいの。吐き気と頭痛で悩む自分って、馬鹿馬鹿しいと思わない?」

「うん」

小さく私は頷いたら、紗季はまた私を見て笑ってくれた。

「じゃあ頑張ろ。こっちゃんも頑張って瑠璃ちゃんと仲直りしたんだよ。茜ちゃんも出来るって。大丈夫。私も愛藍くんもいるし。それに橙磨くんからもメールが来ていたんでしょ?」

最後の紗季の言葉に疑問を抱いた私は首を傾げた。

「どうして知っているの?」

「だって茜ちゃんのケータイ見ちゃったし・・・・」

そうですか・・・・。
でも覗いていたとか、そういう意味じゃないよね?

橙磨さんのメールの意味。
それは『葵と会うから頑張ってね。葵と過ごした自分の過去と向き合うんだよ』って意味だ。

同時に、みんなは『私を応援してくれている』って意味なんだ。

紗季はまだまだ私を励ましてくれる・・・・。

「現実に向き合いたいけど、苦しいから逃げるなんてあまり誉められる行為じゃない。もちろんそれが出来ない人もいるけど、茜ちゃんはそうじゃない。私や樹々ちゃん、橙磨くんに愛藍くん。こっちゃんも力になってくれるし。他にも城崎さんやピアノ教室先生の先生。東雲さんや瑞季くんに向日葵ちゃんに杏子さん。それと茜ちゃんのお兄さんもそうでしょ?お父さんも今は日本にいるって聞くし。ほら、私の知っている人で数えたら、 十人以上はいるよ。こんなにも茜ちゃんの味方がいるのに、それでも一人で居たいと思う理由って何?」

もうやめてほしい。
それ以上言われたら涙が溢れそうだ。

「ないでしょ?そんな理由。意地を張るのはいい加減にしないと。じゃないと、紗季お姉ちゃん怒っちゃうよ」

本当に、また泣いてしまいそうだからもうやめてほしい。

それに愛藍の前だし。
また心配されちゃう・・・・。

って、もう充分心配されているか。
だからと言って泣いていい理由じゃいけど、何て言うか・・・・。

・・・・・・・。

でも仲間が隣にいてくれたら、泣いてもいいよね。
堪えきれない涙を拭い、私は小さな声で泣いていた。

その間も紗季は私の背中を擦ってくれる。