「また葵くんから謝りに来るのを待っているんでしょ?また自分は自分に言い訳して何もしないんでしょ?それで仲直りしたいって、本当によく言えるよね?」

でも私なりに頑張っているのは事実。
のろまな亀みたいに全く物事が進んでいない現状だけど、私も頑張っているんだ。

だからその言葉が納得できなかった。

初めて紗季に反論した。

「紗季に私の気持ちなんかわかるわけないじゃん!私がどんな思いか知らないくせに!」

紗季はまさか私が反論してくるとは思わなかったんだろう。
驚いた表情を一瞬見せた紗季だが、流石は山村紗季という強い意志を持つの女の子だ。

冷静な言葉で、反論してくる。

「わかるわけないじゃん。茜ちゃんは茜ちゃんなんだから。何考えて生きているのとか、私の事をどう思っているのとか、わかるわけないじゃん。というか、それなら私の気持ちもわかるの?愛藍くん気持ちもわかるの?みんな茜ちゃんの事を心配しているってわかるの?」

「それは・・・・」

直後、私は紗季から目を逸らす。

・・・・・。

本当に、紗季はいつもズルいと思う。
お姉ちゃんのような優しい言葉。

私の心を開くためだけの言葉。

そんなことを言われたら、本当に何も言い返せない。
私の胸が痛くなるだけ。

「一人でどうにか出来ないなら頼ってよ。じゃないと私、悲しいよ。『その程度の関係なんだ』って不安になるじゃん」

その言葉の直後、紗季は優しそうな表情から一転。
不安げな表情に変わった。

「むしろ、その程度の関係だったのかもね」

「そんなことは・・・・」

私は紗季の言葉を否定したかったけど、また言葉が出てこなかった。

辛いときは誰かを頼る。
それはこの数ヵ月で一番学んだこと。

『私は一人じゃない』って、いろんな人が教えてくれた言葉。
だからその言葉は私が一番理解していると思っていたのに・・・。

私は今、全くその言葉を理解していないということに気が付いた。
だって実践出来ていないし。
行動では全く誰かを頼れていないし。

本当の私は『わかったわかった』って言って、適当に聞き流していただけ。

そう思ったら私、本当に口だけの人間だ。
理解して実際に行動しないと、何にも意味ないのに。

紗季に全く頼れていない現状。
『助けて』と言えないのが現状。

本当に『その程度の関係』なんだと知った今、私は自分自身を殴りたいと思った。
殴って殴って、自分が理解するまで殴り続けたいと思った。

それくらい私は悔しかった。
だって紗季は私の過去を知る現場で見てきた私の親友だし。

『その親友に頼ることが出来ない自分って、何様なんだろう』って・・・・。

本当に悔しかった・・・・・。

私、紗季のことを友達と思っていなかったのかも・・・。

・・・・・。

一方、紗季は『紗季』だった・・・・。