愛藍がどうして終始不安げな表情を浮かべているのか、ようやく理解できた。

私と同じで『仲直りした私にどんな顔をしたらいいのか、分からなかったんだ』と、ずっと私は愛藍を見てそんなことを思っていた。

でも、それは大きな間違いだと気がついた。

って言うか、どうして紗季は言ってくれなかったんだろう。
小緑のダンススクールに、私の親友だった江島葵がいるってことに。

私と葵の関係を知っているくせに。

城崎さんも知っていたくせに。

・・・・・・・。

いや、私は何言っているんだ。
今朝城崎さんが言っていたじゃないか。

『小緑のあの一件、影で支えていたのは江島葵だ』って。

それに『このダンスが葵の最後の舞台だ』って。

なんでそんな大切な事を忘れていたんだろう。

本当に私、葵と仲直りしたいんだろうか。

昼休憩まで作ってくれて、城崎さんが「小緑のダンスを見に行ってこい』と言った理由は、葵がここにいるから。
『顔を会わせて来い』っていう、紗季や城崎さんからのメッセージなんだろう。

だから朝にあんな話をしたのかな?
わざわざ私だけ早く呼び出して。

『今日は葵と顔を会わせる日だから、その心の準備をするわよ』って意味だったのかな?

・・・・・。

江島葵。
それは私の親友の名前だ。

小学生の時は自分の家族よりも共に時間を過ごした仲だ。
学校でも休みの日でも、毎日彼と一緒にいた。

隣の愛藍も一緒に。

きっと私は葵のことが大好きだったんだろう。
じゃなきゃずっと一緒にいなかったし。

もちろん愛藍も大好き。
『ずっと三人で過ごせればよかったのに』と思っていたのに。

でも私がその関係をぶち壊した。
葵に適当なことを言ったから、葵は怒って私に仕返ししてきた。

だから私は彼に謝らないと。
しっかり相手の目を見て謝らないと。

だけど、それが出来ない。
私は人に謝ることすら出来ない。

言い訳のように聞こえるけど、何故だか葵の顔を見たら吐き気と頭痛が襲ってくる。

無意識に私は彼から逃げてしまって、謝ることができない。

私が葵に謝れば何もかも丸く収まるのに、本当に自分が情けない。