ルビコン

たいして面白くない高校生の漫才が終わった。
逃げるように二人の男子高校生は舞台裏に消えると、何故だか照明と舞台のカーテンが落ちる。

故障かトラブルかなって私は思ったけど、どうやら違うみたい。

「茜ちゃん次だよ。こっちゃん」

紗季の小さな呟きの直後、一度閉じたカーテンが開く。
証明は相変わらず落ちているから舞台の様子は分からないけど、人の気配を感じた。

それも大人数。

そして私があまり聞いたことのないジャンルの音楽が流れた。
何て言うか、明るくて元気の出そうな音楽。

確か『エレクトロニックミュージック』ってジャンルの音楽だ。

その音楽を聴いていたら、突然舞台が明るくなる。
そしてその音楽に合わせて、小さな少年少女達が華麗なダンスを見せてくれた。

黒と赤の衣装を見にまとい、頭には黒色のバンダナ。
その姿はまるでどこかの海賊を連想させるような、少し悪の雰囲気が漂う彼らだった。

いや、彼らは正真正銘の海賊だ。
何故なら彼らのユニット名は『スカイパイレーツ』、空の海賊だ。

空の海賊だからか、舞台で踊る彼らの背中には小さな羽があるように見えた。
まるでこの広い空をその小さな羽で飛び立つ取り鳥みたい。

そのスカイパイレーツで一際目立つ女の子がいた。
彼女は黒と赤の衣装ではなく、黒と緑の衣装だった。

ショートヘアーの明るい茶髪だからよく目立つ。
それにその女の子は他のメンバーと比べて、格段にダンスが上手だった。
まるで他のメンバーを圧倒するような女の子のダンスは、私を夢中にさせてくれた。

彼女の名前は山村小緑。
私の隣にいる紗季の妹だ。

マイペースで落ち着いた雰囲気の持ち主だけど、中学一年生らしく感情をよく見せてくれる。

ダンスを初めてまだ一ヶ月弱なのに、スカイパイレーツのセンターを任せられているみたい。
運動神経もずば抜けて良いらしく、少し羨ましい存在だと私は思った。

だって私は運動は苦手だし、動けないし。
多分体育の授業が一番嫌いだし。

それに、小緑は昔の友達と仲直り出来たみたいだし・・・・。

それともう一人、小緑同様に目立った少年がいた。
中学生や高校生を集めて踊っているみたいだけど、その中で背丈は飛び抜けて高い男の子。

激しい動きだから顔はよく分からないけど、モテそうな高身長イケメンだと思った。

彼も小緑と同じでみんなが着る黒と赤の衣装ではなく、黒と青の衣装。
小緑もセンターを任せられているから、センターで踊る人はみんなと色が違うのだろうか?

正直言って、小緑よりも上手だ。
小緑も上手なんだけど、彼と比べられた小緑が可哀想って言うか。

まるで一人だけ異次元のレベルって言うか・・・・。

とにかく凄かった。
凄すぎて、『凄い』としか言いようがないほど、彼のダンスは凄かった。

でもこの人、どこかで見たことあるような。

何故だろう。
凄く懐かしい気分にさせられる・・・・。

・・・・・。

そして何故だか吐き気と頭痛が襲ってくる。

何でだろう?
まるでカフェ会の時や、夏祭りの時の同じ症状だ。

まだ症状は軽いから全然大丈夫だけど。

でも、ちょっとだけ辛い・・・・。

・・・・・・・。