「えっ愛藍?そっちこそ?どうして?」

そこには桜さんに誘拐された柴田愛藍が立っていた。
何故だか少しだけ息を切らしている。

愛藍は答える・・・・。

「俺はその・・・・、橙磨さんに変わってもらったから。ダンスにあお・・・・、友達が出るから応援しに来た」

息を整えながら話す愛藍の言葉。
それをを聞いた私は、彼から目を逸らす。

同時に気が付いた。
またヘタレな私に、橙磨さんは手を差し出してくれているんだと理解した。

橙磨さんがここにいない理由は、桜さんから愛藍を取り返すため。
きっとさっきのメールの本当の意味も、『後は愛藍と二人で頑張ってね』という意味なんだろう。

でもやっぱり何に対して頑張ればいいのか、何度考えてもわからない。
愛藍とはもう普通に話せる仲だし。

・・・・・多分だけど。

私は愛藍に言葉を返す。

「そうなんだ。私も友達が出るから。紗季の妹だけど」

「紗季?」

愛藍に名前を呼ばれた紗季は、こちらを振り向いていつもの優しい笑顔を見せてくれた。

「柴田愛藍くんだよね?私のこと覚えている?」

「ああ。確か山村紗季、茜の側に居てくれた」

「うん。よく私のこと覚えているね。クラスは違ったのに」

『そりゃ、茜とずっと一緒にいたから』って愛藍から聞こえた気がするけど、小さすぎて本当に言ったのかどうか分からなかった。

「愛藍くんも茜ちゃんの隣にどう?仲直りしたんでしょ?」

「ああ。そうだな」

紗季の言葉に頷いた愛藍は空いていた私の隣の席に座った。
大きな体で肩幅も広い愛藍だから、少しだけ私の肩とぶつかる。

愛藍は一瞬恥ずかしそうな表情を浮かべると、すぐに舞台に視線を移した。

愛藍は表情はなぜか晴れない。
ずっとそうだ。

ここに来てから愛藍は不安げな表情を浮かべている。
桜さんや橙磨さんと何かあったのだろうか。

舞台の漫才を見ると同時に、何故か私のことを横目で見てくる。
何か私、愛藍に嫌な思いでもさせたのだろうか。

「なあ山村。茜って、アイツのこと」

「大丈夫だよ。私がいるし。それに今の茜ちゃんは強いし」

何が大丈夫なんだろうか?
終始意味の分からない愛藍と紗季の二人の会話に、私は首を傾げた。

それに私を挟んで会話してほしくない・・・・。