私は家に帰っても、いつも私の家には誰もいない。
兄はいつも遅くまで仕事しているし、父も『数年間も見ていなかった』と言うのが少し前の現状だった。

私が辛かった時も家に帰ったらいつも一人だったし。
誰も慰めてくれなかったし。

それに、私にはお母さんもいない。
杏子さんのような明るいお母さんはいない。

だから微笑ましい若槻家のやり取りも、本当は私の胸を締め付けているのは事実。
『自分の家族が嫌い』って訳じゃないけど、『どうして私は桑原家の一員として生まれたんだろう』って。

正直言って、悔しかった。
樹々みたいに『家族旅行』に行ってみたいと思う自分がいる。

『なんで父や兄はいつも仕事しているんだろう。どうして私に構ってくれないんだろう』って、幼い時はいつも思っていた。

家族が嫌いになった時がある。

でも、最近は少し違う。
昔と変わらず家では相変わらず一人でいる時間の方が多いけど、最近は本当に違う。

私はこの前初めて兄に私の気持ちをぶつけた。

お兄ちゃんが私の『約束』を守るために作ってくれた大きなシュークリームは、今でも鮮明に覚えている。

あの日から、お兄ちゃんは私のことをよりいっそう心配してくれるようになった。
仕事中だと言うのに、くだらないメールを私によく送ってくれるようになった。

『部下が仕事できなくてイラつく』とか『友達から合コンに誘われたから、俺の変わりに茜が行ってきて』とか・・・・。

あと『今日の晩御飯は茜が作って』とか。

返事に困る内容ばっかりだから、いつも私が無視して終わるっていうオチなんだけど、お兄ちゃんは毎日のようにメールを送ってくるようになった。

ホント、『妹が大好きなシスコンお兄ちゃん』だといつも思わされる。
でも逆に言ったら、その日がなかったら私と兄の距離は開いたままだったのだろうか。
兄妹だと言うのに、『遠慮しあう関係』なんだろうか。

それと『家族の愛』って、どんなものなんだろうか。
考えるだけで少し苦しくなる。

私のお母さんは、なんで存在しないんだろうか。
どこに行っちゃったのだろうか。

なんで誰も教えてくれないんだろう・・・・。

自分を産んでくれたお母さんのことだから、私が知っても良いはずなのに・・・・。