「二人は私が見張っとくから。ってことで、また後から来るから。よろしくね」

美空さんは私達に笑顔を見せると二人の後を追い掛けた。
沢山の人を避けながら、人混みを駆け抜ける美空さんの姿はどこか格好いいと思った。

橙磨さんは私を慰めてくれる。

「なんかごちゃごちゃだね。友達招待したのに残念だね茜ちゃん。でも彼ならまた来ると思うけどな」

橙磨さんのいう通りだ。
確かに残念だけど、最悪今日じゃなくてもいい。

また『明日』や『明後日』と言う日もあるし。

『愛藍に料理を食べて貰いたい』って気持ちはあるけど、この料理を作ったのは城崎さんと東雲さんの二人だし。
私は給食センターから運ばれた給食を、クラスのみんなのお皿に盛るような給食係のような役割だし。

・・・・・・・。

プラス思考なのか、マイナス思考なのか分からない事を考えながら、橙磨さんの言葉に私は頷いた。

でもやっぱり本音は残念だ。
本当にまた後から来てくれたらいいけど・・・・・。

「茜!橙磨さん!」

遠くからまた聞き覚えのある声がする。
『また私の知り合いが来たのか?』と、私は声のする方を振り返った。

というかこれ、樹々の声。
そこには樹々と東雲さん、それと私の知らない女の人が立っていた。
樹々にそっくりな黒髪の女性。

樹々のお姉ちゃんだろうか?
確か樹々にはお姉ちゃんがいるって聞いたことがあるし。

それともう一人。
樹々が押す車椅子には見たことがある人が座っていた。

シワが目立って数ヵ月前とは大きく見た目は変わっけど、間違いなく私の知っている人だった。

「茜ちゃん、久しぶりね。橙磨くんも元気にしている?」

少し枯れてしまったような声で、もう会えないと思った人が私達の名前を呼んだ。

・・・・・・。

「杏子さん、ですか?」