私が楽譜で分からない所があれば、まず栗原先生が確認。
そして栗原先生が実際に弾いたり、言葉で春茶先生に伝える。

その後、納得した春茶先生から指導してもらう。
間に栗原先生が入ったことで春茶先生が納得して教えてくれるため、私も素直に受け入れることが出来た。

私の中のモヤモヤは綺麗さっぱり消えていった。

それから約五年半。
二人の先生のおかげで私の実力もついているらしく、私自身も週二回のピアノ教室の時間を毎回楽しみにしている。

気がつけばアマチュアなのに名のあるコンサートに呼ばれるなど、私はいつの間にか名の知れたピアノ少女と変わっていた。

まあ私自身はコンサートとかで弾くより、自宅の自室で一人静かに弾きたいんだけど。

人前で演奏って何度経験しても慣れないし。
いつも逃げたくなるし。

そんな私に育て上げてくれた春茶先生と栗原先生。

そしてピアノに出会わなければ、私はどんな自分になっていたのだろうか。

過去を引きずって、一生苦しい思いのまま生きていかなければならなかったのだろうか。

と言うより、そもそもあの事件があったからそこ私は二人に出会えた。
ずっと葵と愛藍と一緒に居たら、樹々や橙磨さんだって会わなかっただろう。

春茶先生や栗原先生にだって、会ってないはずだ。
ピアノを弾く私は間違いなく存在していなかった。

そんな事を考えていて、私は一つ思ったことがある。

結局は私の人生、葵と愛藍と過ごしたあの頃の日々に戻されるってこと・・・。

まるでそれが私の人生の軸みたいだ。
私の人生の土台となる、彼らと過ごした貴重な時間。

でもそれがまだ動いていなくて、歯車が上手く回っていなくて。

早く彼らと仲直り出来たら私は何一つ悩むことなく、幸せな人生を歩むことが出来るはずなのに・・・・。

その歯車がうまく回れば、みんな幸せなのに・・・・。

・・・・・・・・。

それをためらう自分がいる。

ダメな私が頑張る私を邪魔をするから、結局何を考えても溜め息しか出てこなかった。

その考え自体『ダメだ』って分かっているつもりなんだけど・・・・・。

と言うか私、結局彼らとどうしたいのだろ?

本音言うなら、何も考えたくない。

今はどうしたいのか自分でもわからない・・・・・。

・・・・・・・・・。

もう自分でも何考えているのかわからない・・・・・。