「だからメニューを急遽変更して、『スープニョッキ』に変更したってワケ。もうすでに器にニョッキは入っているから、あとはスープを注ぐだけ。これなら料理のセンスのない茜ちゃんでも出来るでしょ?」

「確かに。それに美味しそう!ってかニョッキって何?」

「パスタの一種だよ。ジャガイモなどの芋と小麦粉を混ぜて、一口サイズに丸めて作ったイタリアの料理。一般的には芋が主流だけど、色んな食材を組み合わせて作れるんだ」

「へぇー、そうなんだ。で、パスタってなに?」

「樹々ちゃん・・・・まじで言ってる?まあでもパスタは茜ちゃんも流石に知らないか」

いい加減、橙磨さんに腹が立ってきた。
ニョッキが何なのか正直分からなかったけど、パスタは流石に知っている。

城崎さんのカフェもある『すぱげてぃー』だし。

最近橙磨さんが私に対して攻撃的になってきた。
『昔から性格は良くない』と噂を聞いていたが、それは私の中で確信に変わった。

平気で私のことを馬鹿にするし、いじってくるし・・・・・。

二人の会話を聞きながら、私は携帯電話を見ていた。
遊んでいるわけじゃなくて、私に届いたメッセージを返そうと言葉を考えていただけ。

メールの相手は私の親友の柴田愛藍(シバタ アラン)。
『今日絶対にお前の店に行くから』と、わざわざメールをしてくれた。

そんなメール要らないのに・・・・。

でも素直に嬉しかった。
だって愛藍から初めて来たメールだし。思わず保存しそうになったけど、我に返ってやめた。

夏休みの最後に愛藍と会ったけど、それ以来は全くやり取りをしなかった。
何度も電話を掛けようかと私は思ったけど、私は躊躇った。

だってどんな顔して話したらいいのか分からなかったし。

でもこの前、橙磨さんに電話をしたら何故か隣に愛藍がいた。
『昔の仲間の草野球に呼ばれたから行ってくる』と言っていたけど、そこに愛藍がいるなんて思わなかった。

橙磨さんと愛藍は昔からの知り合いだったのだろうか。

ちなみに屋台のメニューが変更になったのもその日だ。

その日は城崎さんの元でパンケーキバーガーを作るテストを行ったけど、テストに不合格。
予め焼いておいたパンケーキとハンバーグや野菜類を時間内に挟むだけのテスト。

慌てた私は盛大にやらかして、見事に『不合格』となったわけだ。

だから、さっきの二人の会話が本当に心に突き刺さる。
私が料理上手だったら樹々も笑顔になってくれたはずなのに・・・・。

・・・・・・。

ごめん樹々。
私もっと頑張る。