「そうね。前向きに物事を考えることが大事かな。茜ちゃんは自分のことが好き?」

本質の分からない質問の答えを探して、私は答えをすぐに見つけ出した。

でも『その答えは間違っている』と思って違う言葉を考えたけど、何も浮かばなかった。

自分を納得させる言葉が見つからなかったから、私は小さな声で間違った答えを答えた。
嘘のない素直な私の答えを答えた。

「嫌いです」

「どうして?」

「臆病だし、人見知りだし、人付き合い上手じゃないし・・・・」

他にも沢山ある。
勉強も運動も出来ないし、物事も何も考えられないバカだし。

ピアノ以外は何も出来ないっていうか。

まるで欠陥だらけの不良品だ。
こんなの、消費者からクレームの嵐が来るに決まっている。

面接とかだったら、誰も『桑原茜という人材をを欲しい』と言ってくれる人なんていない。

誰も必要とされない人間は、生きてていても意味がない社会の不良品だ。
だから私はそんな自分が嫌い。

そう城崎さんも一緒のことを思ってくれたらよかったのに・・・・。

「大人ぽくて、クールで、一人で強くなりたいと願う一匹狼」

笑顔で終始意味の分からない城崎さんの言葉に、私は困惑。

一方の城崎さんは話を続けた。

「桑原茜って子はカリスマ性のある女の子にも思えるけどな。ピアノも上手だし、クールかと思ったら本当は挙動不審の多い慌てん坊。いいじゃんこのギャップ萌」

「城崎さん?」

何か話がズレていると私は思ったが、城崎さんは話を続ける。

「これが私から見た『桑原茜』と言う女の子。知っている?物事にはなんでも『長所』と『短所』が合わせ鏡のように存在するの。その『長所』か『短所』のどっちを選ぶのは自分次第。自分では『何にも取り柄がなくて情けない自分』だと思うけど、周りから見た茜ちゃんは『クールで大人ぽい女の子』かもしれない。だってその人は、桑原茜の『長所』を見ているからね。ピアニスト桑原茜の名前を知った人ならなおさら。逆に桑原茜のことを否定的に考える人は、『短所』しか見えていない桑原茜嫌いのアンチ。茜ちゃんは自分のアンチになりたいの?自虐趣味のあるドエム?」

最後の言葉は色んな意味で私の心に引っ掛かったが、私は城崎さんの言葉に納得していた。

確かに私は自分のことを悪く言うけど、周りは私の良いところを言ってくれる。
私を馬鹿にする人なんて私くらいだ。

同時に城崎さんの言葉通り、『謙虚と自信がないは別の言葉なのかもしれない』と私は思った。

今の私は全然謙虚じゃないし、自分という存在に脅える『情けない私』だし・・・・・。

城崎さんは続ける。