「樹々ちゃんにしても、紗季ちゃんにしても、『自分に自信がない』って言うか。もっと胸はって主張してもいいのに。言っとくけど、『謙虚』と『自信がない』って言葉は全く別だからね。今のみんなは謙虚じゃなくて、ただ自信が無さすぎる。もちろん橙磨くんも。陽気な彼だけど、桃花ちゃんの前では地蔵さんみたいに大人しくなっちゃうし。辛いのはわかるけど、もっと自分に自信を持たないと自分が変わらないよ」

城崎さんの言葉は私の胸に突き刺さった。

だって、本当にそうだと思ったから。

もっと自分に自信を持って生きていたら、もっと早く愛藍と分かり合える日が来ていたかもしれないのに・・・・・。

自信を持って生きていたら、私はどんな自分になるのだろうか。

「知ってた?小緑ちゃんを影で支えていたのは葵くんなんだって」

「江島葵・・・・ですか?」

「そう。小緑ちゃんが通うようになったダンススクール、葵くんも参加しているみたい。なんでも今日の小緑ちゃんと出る舞台が人生最後のダンスだとか」

江島葵(エノシマ アオイ)。
私は彼の名前を心の中で呟いた。

私の親友であり、私の悪友である仲のよかった大好きな葵の名前を・・・・・。

現在の彼のことは何も知らない。
どこの高校に通っているのか、なんでダンスを始めたのか、いつからダンスを始めたとか、さっぱり分からない。

葵がどんな気持ちで今を生きているのかも、私には全く分からない。
数年前まではいつも一緒にいた存在なのに。

その葵の顔を見た今の私は、激しい頭痛と吐き気に襲われる。
同時に『葵の存在が怖い』と思ってしまう。

症状の詳しい原因はよく分からない。
『ストレス的な何か』だと橙磨さんは言っていた。

葵に酷いことをされたから、『脳が拒絶反応を起こす』って言っていたけど・・・・。

だったら、どうして愛藍は大丈夫なんだろうか。
当時葵と一緒にいた愛藍の顔を見ても、何も症状は現れない。

愛藍と一緒に遊んだり、電話で話しても私は葵を見たときの症状が現れない。

一体この差は何だろうか。
でもそれが分かったら苦労はしないって言うか・・・・・。

「葵、元気してるのかな?」

無意識に呟いた言葉に、城崎さんは一瞬だけ驚いた表情を見せる。

そして私に優しく問い掛けてくる。

「気になるの?」

私は小さく頷いた。

同時に小緑が凄いと思った。
だって小緑は過去を乗り越えて、かつての親友と小緑は仲直りしている。
私には出来ないことを、小緑は成し遂げた。

過去の自分から逃げずに、小緑は内側から変わろうと自分の過去を見つめ直した。

それが本当に羨ましい。
『変わってほしい』と本当に思う・・・。

そんなことを考えていたら、またいつもの暗い桑原茜に戻ってしまった。
もうこんな自分とは早く別れたいのに。

・・・・・。