薄暗い店内の中、城崎さんに指示されて私はテーブル席に座って待った。

一方の城崎さんはいつもの定位置であるカウンターで、暖かいコーヒーを入れてくれた。
そのコーヒーからは熱そうに湯気が揺れて、『猫舌でコーヒーが苦手な私に熱々のコーヒーを飲めるのか』と、私はそんなことを考えていた。

それとこの店では名物料理でもあるサンドウィッチを、城崎さんは持ってきてくれた。
毎朝城崎さんが仕込んでいるみたいで、毎日当たり前のように売り切れる看板メニュー。

メニュー表には書かれていないが、城崎さんにお願いしたら持ち帰りも出来るようだ。

その城崎さんは私の目の前に座ると同時に私に笑顔を見せた。

「はい、茜ちゃん。とりあえずコーヒーを飲んで目を覚ましなさい」

「ありがとうごさいます」

まるでお客さんに出すように、城崎さんはお洒落なカップにコーヒーを入れてくれた。
早速その熱々のコーヒーを一口啜ろうとしたけど、思った以上に熱くて飲むのをやめた・・・・。

ってか私、コーヒーなんて飲めたっけ？
寝ぼけて自分がコーヒーが飲めるかどうかすらわからない・・・・・。

そして早速、城崎さんは私に問い掛ける。

「どう？最近調子は？いつも通り以外で答えて」

いつも通り以外・・・・・。
まるで私がその言葉を返すのを分かっているように、城崎さんは不気味な笑みを見せて私に言った。

そういえば夏祭り以来、毎日城崎さんと話しているけど、毎日同じ言葉を返していたっけ。
『いつも通りです』って。

私は『いつも通り』以外で言葉を考える。
でも何も思い付かない。

・・・・・・。

だから私は素直な気持ちを言ってみた。

「えっと、最近は楽しいです」

「どう楽しいの？」

でもそう言われたら困るのが私。
素直な気持ちでもあるのだけど、適当な投げやりの言葉と言うか。

適当だからか、具体的に自分でも何を意味するかは分からない。
本当に、何となくとしか分からない。

けどそれは前までの私。
今なら楽しい理由が分かる気がする。

前より考え方が豊かになった気がする。