その日の午後、烏羽先生が校長室で校長先生と教頭先生に厳重注意を受けている姿を、瑠璃と二人で見かけた。

烏羽先生は『生徒をいじめたとして、責任を取って辞める』と言っていたけど、校長先生はそれを全力で止めていた。

でも烏羽先生の意思は強く、本当に辞めるみたい。
十二月末で突然の辞任が決まってしまった・・・・。

それでも校長先生と教頭先生は烏羽先生を励ましていた。
『他人事のようで申し訳ないが、烏羽先生のお陰で我が校の生徒が救われた』って校長先生は言っていた。

そんな烏羽先生の背中を、僕は放課後に追い掛けた。
瑠璃達を教室に待たせて、僕は慌てて烏羽先生がいる生徒指導室に向かう。

偶然にも他の先生や生徒はいないみたいだ。

「烏羽先生」

「おうどうした?」

ノックもせずに生徒指導室に入る僕を見た烏羽先生は、また優しい笑みを見せてくれる。
それが少し僕の心を締め付ける・・・・。

ここに来た理由はただ一つ。
今の烏羽先生に聞きたいことがあるから。

どうしても理解できない所があるから。

「なんで瑠璃をいじめたのですか?」

その僕の疑問に烏羽先生はまた笑った。
まるで僕を試しているような不気味な笑み。

「さっき言っただろ?『大村に自分が何をやらかしたのか、わかってもらうため』だって」

「そうですけど・・・・理由は別にありますよね?」

「どうしてそう思う?」

一瞬言葉に詰まったけど、僕は冷静に答える。

「だって僕に『いじめを止める方法』なんて聞いてきたから」

「だから?」

本当に意地悪な先生だ。
素直に答えくれたら良いのに。

僕は答える・・・・。

「『いじめの加害者である瑠璃をいじめることが、いじめを止める方法なのかな』って」

自分でも意味がわならない言葉なんだけど、烏羽先生は真剣な表情に変わった。
同時に烏羽先生はペットボトルに入ったコーヒーを一口口に運ぶ。

そして答える・・・。