「おはようございます」

その声の持ち主は若槻瑞季。
本当に彼はいつも、落ち込んだ僕達を照らしてくれるような笑みを見せてくれる可愛らしい少年だといつも思う。

月の光のように、彼の表情を見たら何故だか僕の心が晴れていく。

僕も瑞季に笑みを見せる。

「おはよう瑞季。ほら、瑠璃。僕に謝ったんだから、瑞季にも謝りなさいよ。じゃないと、やっぱり瑠璃のこと許さない」

「う、うん」

僕の言葉に瑠璃はまだ土砂降りのように表情は落ち込んでいた。

一方の瑞季は状況を理解していないのか、慌てた表情を浮かべている。
まるで雲に隠れる満月の月のよう。

そして瑠璃は小さく深呼吸を一つ吐くと覚悟を決めたようだ。
申し訳なさそうな表情で、瑠璃は瑞季に頭を下げた。

「ごめん・・・・なさい瑞季・・・。『もう二度としない』って言うか・・・・。もう絶対にしない」

その言葉を理解するのに瑞季は時間がかかった。
でも最後はまた瑞季は優しい笑顔を見せてくれる。

樹々さんに似た、みんなを笑顔にしてくれる眩しい笑み。

「気にしなくていいよ。それに二人が仲良くなって、僕も嬉しいって言うか」

そう言われても瑠璃の表情は相変わらず晴れない。
本当に申し訳ないと思っているみたいで、瑠璃は頭を上げようとはしなかった。

そしてそれは、大きな体格の無愛想な少年も同じ。

「俺もごめんなさい。二人に悪いことをしたし。『悪い』と思いながらやっていた自分が許せない」

僕は頭を下げる砂田を見て笑ってしまった。

だっていつも無愛想な砂田が見たことない表情で謝っているんだもん。
スッゴく真剣な表情で、申し訳なさそうに頭を下げているんだもん。

こんな砂田見たことないから、何故だか笑ってしまった。

多分砂田も瑠璃と同じ。
笑い方や喜び方が知らないだけ。

だったら、僕が教えてあげる。
最近の僕は色んな経験しているし、色んな表情を出せると思うし。

だから僕は一つ提案する。