こうして、僕と瑠璃の辛い過去が幕を閉じた。
まだ麦の事があるから全て終わった訳じゃないけど、一先ず終わった。

これからの事は、瑠璃と二人で麦を迎えにいけば良いだけの話。

また二人で一から頑張れば良いだけの話だ。

「あっそうだ、いいものあげる」

ふと思い出した僕は自分の鞄を漁る。
そしてこの前の誕生日プレゼントで貰ったお揃いのネックレスを瑠璃に渡した。

お姉ちゃんにネックレスを渡された時、瑠璃にあげようと決めていた僕の宝物・・・・・・。

「なにこれ?」

「ネックレス。僕の誕生日プレゼントに貰ったけど、二つあったから。一緒の二つも要らないし、瑠璃にあげようかなって。僕も付けているから、瑠璃も付けてよ」

僕は自分の首に付けているネックレスを瑠璃に見せると、瑠璃は小さく頷く。

そして僕同様に瑠璃は自分の首にネックレスを付けようとするが、瑠璃はネックレスなんて付けたことがないのか装着するのに苦戦。

結局僕が瑠璃の後ろに回って、瑠璃の首にネックレスを付けてあげた。
僕とお揃いの花の形をした、可愛らしいネックレス。

自然と瑠璃の表情も晴れてくる。

「ペアルックみたい」

「ペアルックって、瑠璃ってそんなこと言う人間だった?」

「うるさい。でも小緑と一緒だったら嬉しい。『昔みたい』で」

瑠璃からその言葉を聞けた僕は凄く嬉しかった。
また涙が出そうなほど嬉しかったけど、涙はなんとか堪えた。

だって、僕も瑠璃と一緒の事を思っていたし。
そんな僕らに、男の子が近づいて来る。

大きな体のあまり表情を見せない砂田恵介の声が聞こえて来る。

「おはよ。仲直りしたんだ。それに同じネックレス」

「そうだよ。ってか砂田、ありがとう」

僕の声に、砂田は首を傾げる。

「なんのこと?」

「ほら、瑠璃も砂田に感謝しなさいよ。僕達の事を想って、麦の事をずっと探してくれたんだから」

少し落ち着いた雰囲気の瑠璃だったけど、大好きな親友の声を聞いて瑠璃の表情が更に晴れた。

そういえば瑠璃、『麦の連絡先知らないか?』と僕を屋上に呼んだ事があったっけ。

「麦?それ、ホント?」

僕は答える。

「ホント。まあでも、昨日電話したけど『出れない』って言っていたし。『同い年の人を見たら酷い吐き気を覚える』って言っていたし・・・・」

僕の言葉に、瑠璃の晴れた表情が消えた。
まるで土砂降りのようなどんよりした落ち込んだような表情を見せる瑠璃。

でも突然現れた月の光のような笑顔の少年の声が聞こえて、僕らの表情が晴れる。