「小緑、ご、ごめんなさい。許してもらえるとは思えないけど、悪いことをしてしまったから。その、ごめんなさい」

何度も頭を下げる目の前の親友の姿に、僕は呆然としていた。

だって嬉しかったから。
その言葉が死ぬほど嬉しかったから、逆に言葉が出てこなかった。

何て言ったらいいのか分からなかった。

同時に『彼女も僕同様に悪の心から正義の心に変わろうとしている』って理解したら、叫びたくなるほど嬉しかった。

でも喜んだら恥ずかしいから、僕は再び瑠璃から目を逸らす。

そして思い付いた適当な言葉を瑠璃に投げつける。

「べ、別にいいよ。結構辛かったんだからね」

「ごめんなさい」

「だからもういいって」

ふと黒板近くの教壇を見たら、いつの間にか烏羽先生の姿はなかった。
まるでカラスの黒い羽根と言う『温もり』を残して、烏羽先生の姿は消えていた。

きっと烏羽先生は気を使って、僕と瑠璃の二人の時間を作ってくれたのだろう。
耳をすませれば烏羽先生が去るような足音が聞こえる。

瑠璃をいじめた犯人は烏羽先生。
理由は僕と瑞季にどんな思いをさせたか理解させるため。

自分の職を掛けてまで、烏羽先生は僕らを助けてくれた。

その常識破りの行動に、『噂通り不気味なカラスのような先生だ』と僕は改めて思わされる。

カラスが他の鳥よりも考える能力が凄いように、烏羽先生が考えていることは、みんなと違っていつも僕を驚かせてくれる。

本当に心強い先生だ。