そうだ、思い出した。
砂田が言っていた、僕が瑠璃に言った酷い言葉。

僕はもう忘れてしまったから、今では瑠璃しか覚えていない言葉。

僕はその言葉と同時に、瑠璃に怒ったんだ。

今から二年前、麦が転校してから瑠璃は可笑しくなる一方だった。
壊れた機械のように、当時の瑠璃に心は無かった。

意味なく人に当たり、周囲の人間を傷つける日々。

そんなある日、瑠璃は自分の気を紛らわせるために僕に提案した。
『そこの家の上木鉢割ろうよ』って。

万引きする前なら、僕も一緒に瑠璃と行動していただろう。

でも僕は断った『そんなことしたらここの家の人が可哀想だ』 って僕は反論した。

怒った瑠璃は僕を突き飛ばし、彼女は本当に知らない家の上木鉢を地面に叩き付けるように割った。

咲いていたアサガオは地面に横たわり、上木鉢も跡形もなく割れた。

その姿を見た瑠璃は、狂ったように笑っていた。
心のない瑠璃は一人で笑っていた記憶がある。

一方で理不尽な理由で割られた上木鉢と横たわるアサガオは、泣いているようにも見えた。

そのアサガオを見ていたら何だか悲しく思った僕の心は、怒りに満ちていた。

目の前の『悪魔という瑠璃』が、アサガオをいじめているという現実に、僕は腹が立った。
腹が立ったから僕は瑠璃に怒った。

『何してるんだ!そんなことしたら駄目に決まっているじゃん!』とここの家の人の代わりに瑠璃に怒った。

そして続けて、僕は言った。

『ごめんなさいって言いに行こ。そんなの、絶対に許される行動じゃないよ!』

それが瑠璃に言った酷い言葉だ。
忘れていた、僕の酷い言葉。

同時に壊された上木鉢と同じで、僕と瑠璃の関係が壊された言葉。