烏羽先生のように信頼できる先生もいるけど、全員がそうじゃない。
逆に烏羽先生のような先生の方が、明らかに数は少ないはず。

「なるほどね。要は頼り方を知らないって訳か。まあ一緒の境遇の人なら話しやすいとか言うけど、そんな人はあんまりいないしな。と言うか、まず『自分が辛い』なんて言いたくないだろうし」

烏羽先生は自分に言い聞かせるように何度も頷きながら、そう言っていた。
真剣な表情だったはずの烏羽先生だが、最後は笑っていた。

「残念だけど俺、いじめも虐待も経験あるんだよなこれが。だから、大村の気持ちは理解できるっていうか」

「えっ？」

僕と瑠璃は目を丸めた。
だってその烏羽先生の言葉は聞き間違えかと思ったから。

信じられなかったから。

そんな僕達だったけど、烏羽先生は僕らの様子を気にせずに言葉を続ける・・・・・・。

「俺ん家すっげー貧しくてさ。毎日一緒の服を来ていたから、毎日クラスメイトに嫌われていた。すっげーいじめられてた。それで家に帰ったら勉強漬けの日々だし。『お前が将来偉くなって、私達を養いなさい』ちなみにこれが俺の母さんの口癖」

その烏羽先生の過去を聞いた僕は、『まだ僕は寝ぼけているのか』と思ってしまった。

だって烏羽先生が昔に酷い過去を背負っているようには見えないし。
いつも僕の前では明るい先生だし人気もあるし。

嫌われる存在とは違うと思ったから。

「だから何でも頼って来て良かったのに。殆どの先生はいじめとか経験したことないから、対応も滅茶苦茶なんだ。でも俺は違う。いじめが許せないのも、俺自身がいじめに遭ったから。なにより理不尽な理由で、『自分のことを嫌い』になってほしくないんだ。『死にたい』と思って欲しくないんだ。せっかく生まれてきたのに、人生楽しまないと意味無いだろ？」

烏羽先生の励ましてくれるような優しい言葉。
同時に僕は茜さんも烏羽先生と同じの事を言ってくれた事を僕は思い出す。

僕の誕生日パーティーを開いてくれたあの日、茜さんは言っていた。
『死にたいとか、自分の事が嫌いになっちゃうでしょ？せっかく生まれてきたんだから』って。

僕は何度も未来を絶とうと思った。
お姉ちゃんの前で情けなく訴えた。

『もう死にたい』って何度も何度も・・・・・。