「人をいじめる理由、それは人それぞれあると思う。ある程度の人は『人をいじめては駄目だ』という知識はあるけど、幼い子は違う。幼かったら『人を馬鹿にする事がダメな行動だ』って知らないかもしれないし。と言うか、それだったらなんで親は教えないのかな?そんなふざけたしつけで、子供が立派になれると思っているのかな。バカじゃないの?」

「え?」

時々お姉ちゃんは表現が過酷すぎる時がある。
真顔で人を馬鹿にするような事を言っているし・・・。

その淡々と話すお姉ちゃんは独り言のように続ける。

「いじめの原因って親にあると思うんだけどな。ダメな大人に育てられたのに、なんで世の中は親じゃなくて子供を批判したがるかな。その子供の人格を作ったのは親なんだから、子供は何も悪くないのに。子供は今の行動がいいか悪いかなんて分からないのに。子供も『人をいじめてはダメ』だと学ぶ必要もあるけど、それを教えてくれない親が一番悪いと思うし。いっそのこと、子供同士でいじめが起きたら加害者の親を逮捕したら、いじめなんてすぐになくなると思うし。と言うかしろよ。そんな国の対応だから、何十年経ってもいじめという言葉が消えないっていい加減に理解しろよ」

「さ、さきねぇ?」

次元離れしたお姉ちゃんの言葉と別人のようなお姉ちゃんの声に僕は違和感を覚えたが、お姉ちゃんは止まらない。

「だっておかしくない?麦くんはあんなに酷く追い込まれたのに、いじめた人間は謝ったら終わりなんだよ。そもそも世間は『いじめが酷い酷い』なんて言っておきながら、『いじめ罪』が無いことがおかしい。悪いと思うなら対策しないと。そんなの本当に口だけ人間じゃん。いじめられている人は本当に辛いのに。まるで『いじめも子供のお遊びの内だ』って言っているような気がして、私はそれがどうしても許せない!」

力強い言葉にお姉ちゃんはようやく我に帰ったのか、恥ずかしそうな表情を一瞬だけ見せた。
でもすぐに強気な表情に戻る。

と言うか、本当に目の前のお姉ちゃんは山村紗季なんだろうか。
こんな怖いお姉ちゃん、見たことない。

「ごめんね、変なこと言って。でもそうしないと『いじめ問題』は解決しないって言うか。お父さんも政治家なんだったら、そんなことを一つでも言ってくれたいいのに。こっちゃんはどう思う?」

どう思うって言われても、話の内容がよく分からなかったと言うのが本音。
難しすぎて付いていけなかったかったって言うか・・・。

「紗季、小緑。飯の時間たぞ」

そんな中、クソジジイの声が部屋の外から聞こえた。
どうやら麦の手紙は、また後で書いた方がいいみたいだ。

「はーい!行こうこっちゃん!」

お姉ちゃんはお腹が空いて待ちきれないのか、僕の腕を掴んで強引に立たせた。
そしてそのまま僕は強引に食卓に連れてかれた。

今日の晩ご飯はなんだろうか?