「終わっちゃった」

教科書や学校から貰ったプリントが散乱した自分の部屋で、僕はそう呟いた。
勉強机に座りながら、目の前には昔お姉ちゃんに貰ったゲーム機。

一方のさきねえは怒っている。

「ってこら!また隠れてゲームしてる」

後ろからお姉ちゃんの声が聞こえて、一瞬だけ驚いたけどすぐに僕はいつもの平常心を保つ。

「だって手紙なんて書いたこと無かったんだもん。現代社会はネットだよ。紙で気持ちを伝えるなんて時代遅れだよ。ってか麦が電話に出てくれたらこんなことしなくていいのに・・・・」

昼休みに砂田から麦の連絡先を貰った。
僕とお姉ちゃんは急いで家に帰って、書かれた電話番号に電話してみた。

相手は優しそうな女の人の声で、心の教室という所の先生だった。
すぐに僕は事情を説明して、麦の様子を確認したけど・・・・。

麦は僕が相手だというのに、電話に出ることを嫌がったらしい。
先生の話を聞くと麦はかなりの人間不振のようで、同じ年くらいの人を見ると吐き気や頭痛に襲われるらしい。

心の教室には他の生徒も通っているらしいけど、麦だけは完全に孤立して、授業も一人で受けているらしい。

その親友の現実に、僕はさっきの瑠璃同様に再び酷く心を痛めた。

だって麦はすごく元気だったのに。
僕はただただ信じられなかった。

まるで夢の中の話だと思った・・・・・。

そんな僕に、お姉ちゃんが提案してくれた。
『電話が無理なら手紙を書こう』って。

提案してくれたお姉ちゃんも一緒に考えてくれているけど、僕は全く言葉が出てこない。
顔を見たら山ほど話したいことはあるのに、何故だか文字には出来なかった。

だから僕はマーロンをしていた。

『少し気持ちを変えよう』って気分転換でやっていたはずなのに、いつの間にか僕はゲームに集中していて、僕はバットエンドしかないはずのゲームの『ハッピーエンド』を迎えていた。

そういえば、お姉ちゃんもマーロン好きだったっけ。