ルビコン

『大村瑠璃消えろ、早く死ね』

『お前のせいで授業に集中できない』

『クソビッチ(笑)』

他にもたくさん書かれていて、僕は読む度に心を痛めた。
そして小さな震える声で、僕は呟いた。

「な、なにこれ?」

意味が分からない。
どうして瑠璃がこんな目に遭っているのか、心の底から理解できない。

確かに瑠璃は悪いことはしていたけど、なんで瑠璃がこんな酷い目に?
僕をいじめた復習?

いや、でも僕はそれを望んでいないし。
瑠璃は反省して、また彼女と仲良く出来たら文句は何一つ言わないのに。

と言うか、誰がこんな酷いことをしたの?
本当に誰?

なんでそんなことをするの?

様々な事が脳裏に浮かんだが僕は慌てて黒板の元へ向かい、黒板の悪口を消した。

だってこのまま放っておいたら、明日になったら瑠璃はみんなの晒し者にされる。
『自業自得』だと言うクラスメイトもいるかもしれないけど、僕は絶対に違うと思う。

どんな経緯があっても、瑠璃がいじめられている事実を放っておけない。

僕は誰もいない教室を何度も振り返りながら、瑠璃への悪口を急いで消していく。
これを書いた悪者が潜んでいないか、周囲を注意しながら黒板の文字を消していく。

でも、黒板からはみ出すような酷い言葉を消すのに時間がかかる。

時間がかかるから、間に合わなかった。
『瑠璃だけには見せたくない』と思いながら消したけど、もう消す意味がなかった・・・・。

「何やってるの?小緑」

そこに『彼女』がいると理解したら、僕の表情が真っ青に変わる・・・・・。

「る、瑠璃・・・・?」

震えた声で、僕は彼女の名前を小さく呟いた。
僕が振り返った先には、僕と同じように真っ青な表情を浮かべる瑠璃の姿があった。

瑠璃は僕を睨む・・・・・。

「まさかあんた?小緑がやったの?」

「僕じゃない!自分で書いて、自分で消すわけないじゃん」

そう言って否定したが、瑠璃の耳には届かない。
それどころか瑠璃はまた僕を襲う。

「ちょっ、何するのさ!」

「うっさい!あんたがいるから、あたしの人生は狂うんだ。あんたがいたから、麦と楽しかった日常が壊された!」

「それ、僕のせい?僕は何にも悪いことしていないのに?痛っ!」

瑠璃は僕に飛び掛かり、僕を攻撃する。
馬乗りのように体制を崩した僕の上に股がると、拳を降り下ろしてくる。

そして頬を殴られた。

『何をするんだ』と抵抗しようと思ったけど・・・・。